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木から落ちた猿

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ワヤンとその登場人物〜マハバラタ 第18章

18. パティ・サクニ、「侫言」を繰る誹謗中傷の徒

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 サクニ〈シャクニ、ワヤンではスンクニ Sengkuni と呼ばれることも多い〉はアスティノ国のパティ〈patih=大臣〉である。細身で顔はアヘン中毒のように青ざめている。「侫言」を弄して人をたぶらかす。サクニの名は『Saka 〜から』の語に由来するSukuと、『ucapan 話す』に由来する『Uni』の語からなる〈口から産まれた者〉。サクニは人を中傷し、煽り、人に害をなす人間の象徴とされる。そして最後には自身の口から出た言葉に強制され、食われてしまうのである。
 血統からいえば、彼は父の小国ポロソ・ジュナル Palasa Jenar 国の王位継承者であった。しかしアスティノ国王プラブ・デストロストロの妃となったデウィ・グンダリ Gendari に従うことを選んだ。その王が生まれつき盲目だったからである。この盲目とは、周囲の状況に無知で、人を見る目が無い性格の象徴なのだ。彼は自分中心であり、善と悪の何たるかを知らない。つまり、欲望に対して盲目ということである。その子どもが100人もいることを見ればわかるだろう。
 クロウォが100人兄弟なのは、K・B〈Keluarga Berencana 家族計画〉の無い頃の話だとは分かっているが、これはやはり人間(デストロストロ)の邪な欲望の象徴ではある。サクニこそが100種の貪欲、悪(ドゥル dur 〈クロウォの100人の名のほとんどがドゥル〜で始まる〉)、そして我が儘を拡大し育て上げた張本人なのだ。彼は『無抵抗に kulawahan 』、クロウォが罪を犯すような行為に走るのを為すがままにした。クロウォを守るために彼は知恵を絞り、誹謗中傷を駆使してアスティノの正当継承者たるパンダワを追いやろうと腐心する。ラコン〈演目〉『バレ・スゴロ・ゴロ Bale Sigala-gala 』では、パンダワたちを焼き殺そうとした。しかしトゥハン〈神〉はパンダワを守り、彼らは九死に一生を得た。それどころかパンダワ自身の力でインドロプラスト Indraprasta 国を建設し、それはインドロ神の国の八分の一の美しさであると讃えられたのである。
 パンダワの成功を見て、サクニはさらなる誹謗中傷でドゥルユドノとグンダリの心を煽る必要に迫られた。今度は狡猾にもサイコロ賭博に誘うという方法を取ったのだ。パンダワは負けた。
 クロウォの勝利にサクニは酔い痴れ、『スム・クニン Sum Kuning 』事件のようなことが行われた〈訳注:1970年9月18日、ジョクジャカルタでおこったレイプ事件〉。サクニは、アスティノ国の王宮内でドゥルパディ Drupadi 〈パンダワの妻〉の衣服を剥ぎ取ろうとしたのだ。ドゥルパディはまさに裸にされようとした。
 『Nguduh wohing panggawe 〈植えた実は自身で摘む、自業自得〉』、後の日に、サクニは自身のカルマ〈業〉を自身に受けなければならなくなった。大戦争バロトユドで、ビモによってその口が引き裂かれ、全身の皮を剥がされることとなったのである。
 自分の罪によって破滅する。誰もサクニのようにはなりたくないであろう。彼は皮だけの姿となり白布に包まれて、ニャイ・ロロ・キドゥル Nyai Rara Kidur 〈南海の女王〉に捧げられるのである。バロトユドの上演を見る人たちはそう信じている。

1976年3月14日 ブアナ・ミング
by gatotkaca | 2013-05-12 00:17 | 影絵・ワヤン
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