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木から落ちた猿

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ワヤンとその登場人物〜マハバラタ 第9章

9. 不婚の人ビスモ、アスティノ国の唯一の相続人

 ビスモの物語への反応として、スマントリの物語と比定した興味深いものがあった。ジョクジャカルタのプロウィロト Prawirata 〈ジョクジャカルタ近郊の街〉のママド・ムダキル Mamad Mudakir 氏が7枚の書簡を書いてこられた。それからクバヨラン・バル Kebayoran Baru 、ブロック・S Blok S. クバレン Kebalen Ⅲ/13のスナルノ・シスウォロハルジョ Sunarno Siswaraharjo 氏もデウィ・スティヨワティとロロ・アミスに関する質問を寄せられた。他にもマディウン、ジャラン・プンドウォ Madiun Jl. Pendawa No.9のウントゥン・スダルモプトロ Untung Sudharmaputra 氏からも5頁以上にわたるお手紙を頂いた。彼は嘆かわしい人生経験を綴っている。
 「おお、敬愛するイル・スリ・ムルヨノ先生。私(ウントゥン)は今や挫折した哀れな者であります。小生が友人宅へ訪問した際、ブアナ・ミング誌を読みました。そこで‥‥小生は元気づけられ、期待し、それからがっかりしました。というのも読み終わってから全能なるお力に導かれた感覚を抱いたからです。不可思議な声が小生に語りました。ーーおお、すべてのものに対峙することを恐れてはならぬ。苦行 tarakbrata を続けるのだ‥‥。等々ーー」

 さて、たくさんの反響に思いを馳せて、改めてお礼を申し上げるとともに、神の恩寵に感謝いたします。今度は私がお答えする番ということになる。なぜワヤンの物語というものは、〈さまざまなヴァージョンがあって〉ずれが生じていて、混沌とし、混乱し、不可思議で変なものなのに、支持者たちの興味を惹き、注目され、愛されるのであろうか。たとえば、ヨグヤ Yogya 〈ジョクジャカルタ〉のスムボゴ Sumbogo 氏や東カリマンタン(マレーシア東サバ州)のスプラプトモ Supraptomo 氏の意見に見られるようにスマントリ、ビスモ、スティヨワティ、アビヨソといった人物たちは支持者たちの興味を惹き、注目され、愛されている。

 ニョマン・S・プンディト Nyoman S. Pendit 作の『マハーバーラタ』のヴァージョンによれば、ビーシュマはシャーンタヌとバタリ・ガンガーの息子である。ヴィヤーサ(マハーバーラタの作者)はパラーシャラと漁師の美しい娘サティヤヴァティーの正規でない結婚による子である。ヴィヤーサ(アビヨソ)を産んだ後、サティヤヴァティーは聖仙の祝福により再び『処女』を回復した(ⅩⅢ頁)。デヴィー・サティヤヴァティーはその後アスティナ王プラブ・シャーンタヌの妃となり、二人の子チトラーンガダとヴィチトラヴィーリヤを産んだ。チトラーンガダは、あるガンダルヴァとの戦でこの世を去り、弟のヴィチトラヴィーリヤはアムビカーとの結婚でドリタラーシュトラを、アムバリカーとの間にパーンドゥをもうけた。またルシ・マンダルヤ Mandarya に呪われたブガワン・ダルマの生まれ変わりであるヴィドゥラは、アムバリカーの侍女から産まれた。彼はビーシュマによってアスティナ王ドリタラーシュトラの相談役に任じられた。
 
 シャーンタヌがサティヤヴァティーと結婚することができた蔭には、ビスモの犠牲があったことを忘れてはならない。ビーシュマは誓った。
 「私は約束し、その言葉を固く守る。父と義母の間に産まれた子が王となる。私は王位継承権を放棄し、私の子孫が王位を脅かすことのないように、生涯結婚しないことを誓う。我が生涯は神への献身と聖性のために捧げられるであろう。」
 デーヴァブラト(ビーシュマ)が聖なる誓いを表明すると、彼の頭上から芳香の花々が散りかかり、天に声が響いた。『ビーシュマ、ビーシュマ、ビーシュマ。』『ビーシュマ』とは聖なる誓いをたて、それを実行する者を意味する。デーヴァブラタはこの条件を満たした者なのだ。これ以後デーヴァブラタには、誠実と不変の体現者たる誉れ名としてビーシュマが与えられたのである。
 というわけで、マハーバーラタによれば、アビヨソはクロウォ、パンダワとは本当は関わりが無いのである。このヴァージョンに従うなら、大戦争バラタユダ、バラタ族の戦争という呼び名は正しいということになる。そしてビスモこそがアスティノ国の唯一の相続人ということになるのである。
 バラタユダ・カウェダル Baratayuda kawedar 〈訳注:マハバラタ・カウェダルの誤植と思われる〉やワヤンの演目ではどうなっているか探ってみよう。

1976年6月18日 ブアナ・ミング
by gatotkaca | 2013-05-04 01:43 | 影絵・ワヤン
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