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木から落ちた猿

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アルジュノ・クムバル その6

8.プラブ・ボロデウォがドロワティへ出発する

 プラブ・ボロデウォはパティ・プラゴトに、王妃の守りとして二人の息子ウィルムコとウィソトを残して、全軍でドロワティ国へ随行するように、と命じた。プラブ・ボロデウォは宮殿に入り、コラワたちは営舎に向かった。
 次の日、軍はすばやく準備を整え武器を装備して王に随行してドロワティ国へ向かった。プラブ・ボロデウォは戦士の装いで、愛用の象プスポドゥントに乗っていた。パティ・プラゴトが出発の号令を発した。パティ・プラボウォは、先発隊として武器を整え、輝く衣装を着た四百人の部隊を率いた。その後ろにパティ・プラゴトに率いられた四百人の兵士が続いた。馬に乗ったアルヨ・ブリスロウォと並ぶパティ・スンクニたちに従う隊列が続く。続いてアルヨ・チトロジョヨ、チトロ・チトロその他の部隊。ディルガスト、ディルゴ・ディルゴその他。ダルモジョヨとダルモ・ダルモその他、スルトユドとスルト・スルトその他、アルヨ・ドゥルキヨとドゥルボロその他、みな馬に乗っている。道中のことは省いて、今や彼らはドロワティ国の領域に入った。
 アディパティ・カルノがプラブ・ボロデウォを出迎えた。彼はプラブ・ボロデウォに事の経緯を報告した。今は鉄の牢獄に閉じ込められているアルジュノを相手に戦った時のことを。サン・プラブ・ボロデウォは笑いながら、アルジュノに対してどのように戦うか聞かせた。
 ラデン・ソムボとアルヨ・スティヤキはあわててマドゥロの王の到来を迎え、後に従った。サン・プラブ・クレスノは兄プラブ・ボロデウォの到来を見て、席から立ち、喜びにあふれてプラブ・ボロデウォを出迎えた。兄王に玉座に座るようすすめた。アディパティ・カルノとコラワたちは賓客用の館に入って座り、司令官や大臣たちはブグラランに座して、二人の兄弟王に対面した。
 互いに挨拶を交わした後、プラブ・ボロデウォは言った。「弟クレスノよ。プラブ・スユドノから、ブリスロウォの願うスムボドロとの結婚の件について、私に任せたいという書状を受け取った。その書状の中には、アルジュノがドロワティに戻って来て、スムボドロをマドゥコロへ連れ戻したいと求めているとも書かれていた。アルジュノの到来は礼儀を無視したものであり、それゆえアディパティ・カルノとコラワたちの怒りをかった。けれどどんな武器でもアルジュノを屈服させることはできなかった。そなたがスンジョト・チョクロを掴むと、アルジュノは身を任せ、そなたの怒りは鎮まった。そなたは今やサユムボロを催し、ブリスロウォがスムボドロと結婚できるには、コラワたちが、今鉄の牢獄に閉じ込められているアルジュノを殺さなければならないこととなった。これらが本当なら、私はアルジュノ本人と会いたいのだが。」
 サン・プラブ・クレスノも、アルジュノを殺すと決めることは出来なかった、と言った。プラブ・ボロデウォは続けて言った。「クレスノ、恐縮する必要は無い。私は檻の中のアルジュノを自分で見てみたいのだ。」
 プラブ・ボロデウォは座を立ち、武器を抜き放ったアディパティ・カルノとコラワたちを引き連れて牢獄へ向かった。牢屋にはしっかりと鍵が架けられ、開く事はできなかった。牢屋の外からプラブ・ボロデウォは強い口調で叫んだ。「よお、アルジュノ。マドゥロの兄はそなたが恋しいが、そこに入る事ができん。どうだな牢屋の中の気分は?暗いか、明るいか、暑いか、寒いか?」
 牢屋の中から返事があった。「ここはとても暑くて、とても暗い。」
 サン・プラブ・ボロデウォは笑って言った。「はは、そなたはまだ正気のようじゃ。その証拠に暑さや暗さは分かるようだ。五年間の放浪も終わったな。わしはそなたが出奔する以前にも増して超能力を得たと聞いた。なぜそなたは牢屋の外に出て来ないのだ?」
 牢屋の中で返事があった。「この牢屋はとても頑丈だ。どうやったら外へ出られるのだ?けれど兄王が命じてくだされば、私は外に出られるのだが。」
 サン・プラブ・ボロデウォは牢屋から聞こえる言葉を聞いて、びっくりした。怒りを込めてかれは言った。「そなたは何と傲慢なのか。もしこの牢屋から出られたなら、そなたをわしの師にしてやろう。」
 牢屋の中の者はその言葉を聞きくと、突然、サン・ボロデウォの前に現れた。マドゥロの王はこれを見て驚愕し、コラワたちもビックリした。プラブ・ボロデウォは胸を打たれ、地面に倒れ、かろうじて立ちあがった。パティ・プラゴトとプラボウォは殴られてビックリし、逃げ出した。コラワたちは怒りをつのらせ、互いに言い合った。「どこだ。やつはどこにいる?」アルジュノはスマルとその息子たちと一緒にブリンギンの檻の下に座っていた。サン・プラブ・ボロデウォは怒りを込めて言った。「おい、コラワたち、我が一騎打ちに手を出してはならぬ。一対一でやってやる。そなたらの助けはいらん。見ているだけで良い。遠くから我が戦いを見て、歓声をあげるのだ。」
 サン・プラブ・ボロデウォはすぐさまスンジョト・アルゴロを掴み、進みでた。コラワたちは騒々しい歓声をあげた。プラブ・ボロデウォは叫んだ。「おい、アルジュノ、我が敵よ。わしを殺すことはできぬぞ。さあ我がアルゴロの一撃で粉々になるがいい。」
 疑いなくアルジュノは彼の前に立っていた。渾身の力を込めてプラブ・ボロデウォは、強力なスンジョト・アルゴロを敵に向けて振り下ろした。まちがいなくアルジュノを粉々に打ち砕いたと思ったが、サン・アルジュノは彼の前に何事も無く立っていた。プラブ・ボロデウォの怒りは増し、スンジョト・ナンゴロを取り、敵の頭に引っ掛けた。アルジュノの首は消し飛んだと思われた。サン・アルジュノに、三度に渡ってスンジョト・ナンゴロが振り下ろされたが、彼は平気であった。プラブ・ボロデウォは激しく暴れ回わる。サン・アルジュノはブリンギンの樹にもたれかかっていた。彼はアルジュノを粉砕したと思ったが、遠くへ放り投げられてしまった。サン・アルジュノは彼の前に立ったままだった。コラワたちは叫び声をあげ、止む事は無かった。

(つづく)
by gatotkaca | 2012-05-16 00:58 | 影絵・ワヤン
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