人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

木から落ちた猿

gatotkaca.exblog.jp

カカウィン・アルジュノ・ウィウォホ その9

詩編21

1.  ニヴァータカヴァチャは威風堂々
   約束を違え、欺いた者たちに大いに怒る
   もはや約束の貢ぎ物などいらぬ、彼の欲するものは戦いのみ
   力と勇猛さをもって戦うのだ

2.  その大臣たちは、四人、忠実で、名を知られた貴族の出だ
   ケルダクシャ Kerudaksya 、ドゥシュケルタ Dusykerta 、ヴィラーカ Wiraka 、そしてカララワクテラ Karalawaktera である
   すべての者はヒラニヤカシプ Hiraniakasipu の後裔であり、カーラケーヤ Kalakeya の一族である
   彼らは真に戦闘のイルム〈知識〉を持つ者たちだ

3.  彼らはかつてシュメール山から降りて来た神々である
   今はヒアン・シャクラ Hiang Syakera 〈インドラ〉だけが彼らを破ることの出来る者だ
   力なき人間の従者を引き連れて、まこと彼らは高慢となった
   それにもかかわらず彼らは少しも迷わず、
   インドラの天界を奪える〈と考えている〉

4.  ラークシャサ王の出発は死のしるしである
   彼は光り輝くダイヤモンドの車に座す
   恐ろしき象に引かれ、その側面は縞模様
   大地を引き裂いて進む

5.  彼は大いなる怒りを抑えて座す
   一人のビダダリがその足を支え、もう一方の足はぶらぶらさせている
   その熱くなった心をもう一人のビダダリが扇いでいる
   怒りの炎がその目に赤くくすぶっている

6.  大いなるアスラ軍の様はすさまじい
   百ラクサ〈10,000〉のラークシャサが王を守る
   彼らは虎、馬、獅子そして驢馬にも乗っている
   さまざまな武器が毛皮から飛び出している

7.  その頭には蛇革の旗がたくさんあり
   光輝く魔法の宝石の冠
   その数一千と八十、色とりどりである
   ラークシャサ王の旗は大地に架かる虹のようである

8.  ケルダクシャとドゥシュケルタが先導となり、二人の威容は同じである
   二人は同じ血族、同じ武器を持ち、同じ旗、同じ乗り物に乗る
   彼らはスンダ Sunda とウパスンダ Upasunda の息子
   力に頼む英雄である
   激しさ恐ろしさとがその身に纏われている

9.  進軍するラークシャサたち全てがその武器は万全
   空を飛ぶ者あり、歩く者あり
   巨大な象の皮の旗には象牙が付いている
   鮮やかに明滅する曇天の雲のようだ

10.  軍の先頭に立つ二人は〈軍隊という〉戦車の御者のようである 1)
   ヴィラクタ Wirakta とカララワクテラは同様の美しさ
   ラークシャサの化身の巨大な象に乗る
   彼らは打撃戦が得意で、同じダイヤモンドの棍棒を持つ

11.  たくさんのラークシャサの英雄が軍の躯であり 2) 彼らは徒歩である
   戦士の他に億の司令官があり
   輝く毛の獅子の皮の旗が
   風に吹かれる波のようにうねる

1)Sebagai sais : 軍隊を戦車に喩えている。2)Tubuh balatentera : 軍の主要な部分。

12.  主だった者でないラークシャサたちは全て
   四つの門から街を出て止まること無く
   森や谷と一緒に動く山のように進む
   その足音は海鳴りのようであった

13.  もはや樹々の立つ森は無く、すべては破壊された
   大風に吹き飛ばされ壊されたかのようだ
   馬や車輪に踏みつけられ、潰されて壊れてしまったのだ
   地鳴りが起こり、森が倒壊し、雷鳴が轟き、荒々しい旋風が起こる

14.  それはマニマンタカ国のすべてが瓦解し溶解するしるしである
   シュメール山の南側は大騒ぎだ
   巨大なラークシャサ軍が殺到して地震が起こる
   天界の彼らが通過した所すべてが破壊され、叩きのめされた

詩編22

1.  出陣するラークシャサ王のことはさておき、目的を達したパンドゥーの息子〈アルジュナ〉のことを語ろう
   〈彼は〉神々を招集したサン・ヒアン・スラーパティ〈インドラ〉に拝跪した
   長々と話されたが、明らかでなく、尋ねられることが多かった
   勝利の故、幾度も声が高鳴った

2.  サン・パールタ〈アルジュナ〉の言葉によれば、アスラの王はすでに出陣し、彼の到来を迎え撃つ準備が必要である
   「スリ・インドラ神におかれましては、彼の軍を迎え撃つ準備をなされるのが善いと存じます、
   メール山の麓はアスラの軍に埋め尽くされ神の地はすべて彼らに蹂躙されるでありましょう、
   神々は皆退き、スラーパティのご加護を求めてやって来ることは明らかです」

3.  「おお、我が息子よ!我らはそなたを待つのみ、皆の者はすでに戦いとなることを解っておる
   敵が出陣して来たならば、全ての砦に見張りを立て守りを固めねばならぬ
   破壊されたところからは全ての見張りと衛兵をすばやく撤退させるよう
   されど、多くの者に心づもりさせねばならぬ

4.  攻められようが攻めようが変わらぬのが偉大なる英雄の心意気というものではないか?
   洞窟の中で襲われても、獅子に敗れることなく
   虎に出会えば、虎が死ぬ
   領土をわきまえず、迷わず目的に向かう者、彼の者は危険を知らぬ」

5.  ヒアン・シャクラの言葉はそのようであった
   チトラーンガダは言った「スリ・インドラ神の言葉はまさしく真実なり
   聖典の教えをはっきりと想起せよ
   我らが以前サン・ボーマ Sang Boma に敗れ、後にメガナーダに敗れた理由は
   不意に襲われ準備も出来ず、考える間も無かったからである

6.  今や敵はすでに出陣した
   我らは出来るだけ速く〈敵と自陣の〉途中で迎え撃つのが良い
   これには二つの利がある、士気を高め、シュメール山の南側全ての助けを得ることばできること
   すでに戦いの準備は終わり、神の一族全てに怠りはない
   我らは立派に戦い、勝とうが負けようが、戦いの責務を果たすのだ」

7.  サン・チトラーンガダの言葉はそのようであり、スラーパティは神々と共に承認した
   皆に知らされ、全ての者は出発した
   サン・パールタの知り得た秘密はインドラ神との二人の間だけで話された
   敵の放ったたくさんの間諜に知られないためであった

詩編23

1.  サン・ヒアン・スラーパティ〈インドラ〉は轟をあげる神の軍隊と共に街を出た
   彼はあらゆる宝石で飾られ、火山のような姿の巨大な象、エルワナ Erwana に乗る
   煌めく武器を携え、頭上にはガルーダの形の傘が雲のように広げられ
   その王冠からは太陽のように光を放っている

2.  たくさんのシッダとルシたちがバタラを讃える叫びをあげて歓迎した
   神に花々が投げられ、雲も無いのに突然雨が降った
   その道程に良きことあらんと、瑞兆が多く見られ、躯は震える
   世界は太鼓、サンカラ、銅鑼、タンバリンの轟に満ちた

3.  ビダダラ 1) 、神の軍の司令官、多くの者たちが制服に身を包み進んで行く
   装甲兵は数万を数え、
   列をなし、プンディトは数千にいたる
   神の旗は絹、野生の象が描かれ、金の縁取りがされている
   光に縁取られた曇天の雲のように

1) Bidadara : アプサラ、半神。

4.  チトラガーンダの顔にはあらゆる宝石とエメラルドが付けられ
   屈強の兵たちは億を超え、その全ては剣術に長けている
   その旗は全て赤く、携えた鋼鉄の槍は蛇のように長い
   金粉を施した房が揺れて、大地は炎に焼かれたようだ

5.  スラーパティの後ろにはチトラセーナが美しい出で立ちで弓を持つ
   宝石を散りばめた鮮やかな赤い幕が引かれている
   鋼鉄のクリス〈短剣〉と短剣の部隊が回り、目にまばゆいばかりだ
   百八の旗が空にはためき、水銀のように煌めく

6.  スラーパティの長子、サン・ジャヤンタ Jayanta は宝石で飾られた車に乗る
   磁石よりも強くなれるよう、マントラ〈呪文〉を唱えた
   神の旗は樹の皮、端は湾曲し、金の縁取り、
   麝香〈の香り〉をまき散らし、華麗である

7.  そのアプサラ軍の多くは帽子を被り、司令官は槍を携える
   他の戦士たちは剣を高く掲げ、背に負う者もある
   全員がトポン〈かぶり物の一種〉を被り、房の付いた上着を着て、首には花輪を掛けている
   素早く進み、高揚して、ボレ 1) の粉と金粉を付け、雄叫びを挙げる

8.  パンドゥーの息子〈アルジュナ〉は殿〈しんがり〉だ、宝石を散りばめた〈戦車〉に乗る
   御者の名はサン・マータリ Matali 、素早い判断で車を御す
   その旗は白、虹のよう、弧を描く光を発する
   王冠は輝き、鎧は彼の前に虹が出たかのように様々な色に輝く

9.  若きガンダルヴァ 2) の前には、弓持つ歩兵がその数、九百人
   そのほかに象や馬に乗る者一億人、クリスを携えている
   はためく旗はガルーダの羽、太陽に近づく雲のようだ
   炎のように分かれて渦巻き、大地を脅かす

1)Boreh : 黄色の粉。2)Gandarwa : 半神、インドラの天界の歌い手

10.  サン・チトララタはスラーパティに命じられ、アルジュノを助け、つねに傍らに備える
   スララヤに住まうすべての神々も王の息子の後ろに従う
   さまざまな武器を持ち、雲のようなもの、曲がりくねったものもある
   軍勢は太陽に照らされた山々の峰のよう、満ち潮の海のようである

11.  街の外には群衆が集まり、時をおくにつれ増えて行く
   雲の上を進んでいた軍勢は地上に降りる
   シュメール山の麓に降り、それは一かたまりの海のようだ
   空が崩れ落ちたように激しく揺れ動き、九番目の星の王は粉砕する
   スラーパティの軍勢は九千の月と太陽のように光を放つ

12.  世界は七度パシュパティー〈シヴァ〉によって創造されたかのようだ
   軍勢は整列し、大いなる力を示し、凄まじい
   馬、戦車、象たちのたてる塵も行進している
   谷も丘も、山も森も踏みつけられて平になった

(つづく)
by gatotkaca | 2012-04-15 16:09 | 影絵・ワヤン
<< カカウィン・アルジュノ・ウィウ... カカウィン・アルジュノ・ウィウ... >>