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木から落ちた猿

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カカウィン・アルジュノウィジャヤ

 Arjunawijaya; A Kakawin of MPU Tantular by S. Supomo (Bibliotheca Indonesica; Koninklijk Instituut voor Taal-, Land- e Volkenkunde 14, Martinus Nijhoff (1977)
「アルジュノウイジャヤ  ムプ・タントラルのカカウィン」S・スポモ著、という本を入手した。
 「カカウィン・アルジュノウジャヤ(アルジュノの勝利)」は「ラーマーヤナ」『ウッタラ・カンダ』に記されている、魔王ラーヴァナの誕生から、カルタヴィーリャ・アルジュノとの戦いまでを主題としたカカウィンで、13世紀頃に成立した。著者は、宮廷詩人ムプ・タントラルで、「カカウィン・スタソマ」も彼の作であるとされる。これで、ジャワにおけるアルジュノ・ソスロバウ説話の最初期の姿がわかってきた。
 「ラーマーヤナ」がジャワへ伝播した最初の成果として「カカウィン・ラーマーヤナ Kakawin Ramayana」が成立したのは、サンジャヤ朝の王都がメダン Medang(スラバヤ地方、スマトラのメダンとは別)に置かれていた頃と推定されている。ジャワのワヤンでは、「ラーマヤナ」本編は「ラマヤナ」演目群、ヴァールミーキ版「ラーマーヤナ」の第七編『ウッタラ・カンダ』に記されている、ラーヴァナ一族の成立から、ラーヴァナの世界征服の旅、およびハイハヤ王カルタヴィーリャ・アルジュナとの戦いの経過が、「ロコポロ」、「アルジュノソスロバウ」の諸演目へと展開する。『ウッタラ・カンダ』にはカルタヴィーリャ・アルジュナの最後は記されていない。ワヤンの「アルジュノソスロバウ」演目群は、これにパラシュラーマ説話(カルタヴィーリャ・アルジュナの死を含む)を加えて構成され、現在の形に至っている。
 現在のワヤンにおける「アルジュノソスロバウ」演目群で重要なプロットを占める「スマントリとスコスロノ兄弟の物語」は、すでに紹介した「ウッタラ・カンダ」36〜38節に見られるように、インド版「ウッタラ・カンダ」には存在しない。しかし、ラーヴァナの手下のラークシャサとして、スカ Sukaとサーラナ Saranaという兄弟が登場する。この兄弟は「ラーマーヤナ」本編(ラーマ説話に入ってから)にも登場するが、それほど目立った活躍はない。ふたつの名をつなげれば、スカサラナ SUKASARANA となり、スコスロノと同じ名となる(バリのワヤンでは、スコスロノはスカサラナ Sukasarana の名で登場する。* "Dancing Shadows of Bali Theatre and Myth" by Angela Hobart, KPI Limited, 1987, P.53)が、この人物たちが直接スコスロノの原型であるとは言いがたい。ちなみにラウォノの手下としてのスカスラナはスナルディ著「アルジュノ・サスラバウ」にも登場するが、ここでスナルディ氏は、はっきり「パティ・スウォンドの弟ではないスカスラナ 」と書いているので、(Sunardi "Arjuna Sasrabahu" Balai Pustaka , 1982 P 321)ウッタラ・カンダに登場するスカとサーラナの存在を前提としている。今日、ワヤンの世界では登場することの無い(少なくとも筆者は知らない)ラウォノの部下であるスカサラナも、文芸の世界には残っている例もあるといえる。
 「カカウィン・アルジュノウィジョヨ」の段階では、スマントリの弟スコスロノは存在しない。スマントリに関しては、彼が仕官した後賜るスワンダ Suwandha の名で登場する。彼はアルジュノ王家臣筆頭として登場し、ラーヴァナと闘って戦死するだけである。ここではまだスワンダ(スマントリ)の仕官やそれにまつわる弟がらみの話は全くないが、スワンダという人物は、ムプ・タントラルの創作であり、生粋のジャワ・オリジナルのキャラクターなのである。スポモ氏は、ムプ・タントラルがこの人物を、その描写の類似性などから、「カカウィン・ラーマーヤナ」におけるラーマの弟、ラクシュマナにヒントを得て創造したのではないかと述べている(ivid,1 P44)。
 アルジュノ・サスラバウの妻も「ウッタラ・カンダ」では名が記載されていないが、「カカウィン・アルジュノウィジャヤ」ではチトロワティの名が現れている。アルジュノが塞き止める河の名はワヤンではガンガ(ガンジス)河、あるいはヤムナー河であるが、ここではまだ「ウッタラ・カンダ」にあるナルマダー河となっている。河を塞き止める際、アルジュナが「トゥリウィクラマした」との記載がある。「ウッタラ・カンダ」でのアルジュナには変身の描写は無いから、アルジュナのトゥリウィクラマもこれが最初の描写となる。
 一方、アルジュノはスナルト氏の記事にあったように、ルドラRudra の化身とされており、まだウィスヌの化身ではない。この時代、すでにトゥリウィクラマという語はウィスヌと離れた意味で用いられるようになっていたのであろうか?それともこの語を単なる巨大化の意で用いたのはタントラルが最初なのか?詳細はまだ不明である。
 いずれにしてもアルジュノ・ソスロバウがウィスヌの化身とされるのも、スマントリ、スコスロノ兄弟の話が成立するのも、「カカウィン・アルジュノウィジャヤ」より後の時代(13世紀以降)、ジャワの内部での変化であることが確定したとは言える。
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by gatotkaca | 2011-10-28 00:13 | 影絵・ワヤン | Comments(0)

カルタヴィーリャ・アルジュナ その3

(承前)

ウッタラ・カンダ

38節

 かくてプラスティヤは天界で、ラーヴァナが捕らえられ、風の持ち物(虜囚の意)となったことを聞いた。息子への愛に突き動かされ、さんぜんと輝く、偉大なる苦行者はマヒシュマティの王に会いに行った。空を飛び、生まれ変わる者は風の速さで、心を飛ばしてマヒシュマティの街に到着した。ブラフマーがインドラのアマラヴァティに入ったようであった。彼はインドラの首都とも見紛う街に入った。光に満ちあふれ、市民の肉付きは良かった。偉大なるリシはアディティヤーのように歩き、アルジュナ王に知らせを伝えるよう門番に言った。了解を得てプラスティヤはやって来た。ハイハヤの王は椰子を畳んだ玉座にあり、彼を歓迎した。ヴリハスパティがプランダラの前に進み出るように。王への謁見の前に彼にマドゥパルカと足洗いの水が運ばれた。日の出が現れたような苦行者を見て、アルジュナ王は、インドラがマハデーヴァに敬意を表するように、うやうやしく頭を下げた。彼のマドゥパルカの提供は、牛と足洗いの水であった。ハイハヤの王は喜びで口ごもり、意を決してく業者に言った。「尊き師よ。ご訪問頂き、得難きことであります。我が街マヒシュマティをご覧頂いてから、アマラヴァティにお帰りください。今日私は吉祥を得ました。おお、主よ、今日は我が信仰の行為が実った日である。今日は我が誕生の祝福に証のあった日である。今日は我が敬虔なる苦行に成功が冠せられた日である。私はその足下に礼を尽くそう。それこそが私の天への信仰となる。我が王国、我が息子たち、妃、私自身、そのすべてを御身に委ねます。御意を賜りますよう。おお、ブラフマン、あなたのために出来ることはなんでしょう。」王の信仰深い問いを受けて、彼は息子への恩赦を乞うた。プラスティヤはハイハヤの王アルジュナに言った。「おお、最高の王、おお、蓮の花びらの目をした者よ!おお、そなた満月の顔の者よ!汝は三界に並ぶ者なきラーヴァナを敗った。そなたは、風も海も恐怖で立ちすくむ無敵の息子と争い、縛り上げた。栄光に酔った息子にそなたの存在を知らしめた。されば私は言おう、おお、我が息子、ダシャーナナを自由にしてください。」プラスティヤの願いを聞き、アルジュナは無条件に受け入れ、ラークシャサの王は最大の喜びをもって解放された。天界の敵は解放された。信仰に沿った装飾品と花輪と友情が天界に供され、火の前のラーヴァナの敵意は失われた。ブラフマーの息子、プラスティヤに対し頭を垂れて彼は自らの家に帰った。プラスティヤの助けで解放されたラークシャスの王、強力なるダシャーナナは彼の歓待を受け、彼によって受け入れられ、恥じ入って故郷へ帰った。ダシャグリヴァに自由を与えたブラフマーの息子、最高のムニ、プラスティヤは天界へ帰った。おお、ラーマよ、かくして強力なるラーヴァナはアルジュナに敗れプラスティヤによって解放されたのである。よくよく観察されよ、ラグの子孫よ、強力なる者にもより強力なる者がある。かくて、ある者が、彼に良かれと願うならば、他の者を無視してはならない。千の腕のアルジュノとの友情を得たダシャーナナ、ラークシャサの王は、世界の王たちを苦しめる旅を再び始めたのだ。」

(了)

 ヴァールミーキ版「ラーマーヤナ」における、カルタヴィーリャ・アルジュナに関する記載は以上のようなものである。カルタヴィーリャ・アルジュナ対パラシュラーマの説話は、「バーガヴァッタ・プラーナ」で見てみたい。
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by gatotkaca | 2011-10-24 11:31 | 影絵・ワヤン | Comments(0)

カルタヴィーリャ・アルジュナ その2

(承前)

ウッタラ・カンダ

37節

 恐ろしいラークシャサの主が花々を集めたところからほど近い、ネルブダ河の岸辺に、マヒシュマティの王、最高の勝利者、アルジュナが、水のなかで妻たちを遊ばせていた。彼女たちに囲まれて、アルジュナ王は千の牝象に囲まれそれを率いる象のようであった。その力を誇示するため、ハイハヤ王は千の腕でネルブダ河の流れを塞き止めていた。カールタヴィリャアルジュナの腕に塞き止められて、岸辺は清らかな水が洪水となってあふれ、ネルブダ河は逆流していた。雨期のように潮流は高まり、魚や、鰐が浮かんでいた。カルタヴィーリャによってラーヴァナに向かった流れは、彼の集めた花々を流し去ってしまった。祈りを頓挫させられたラーヴァナは、お預けを食った娘のようにネルブダ河を見た。潮流は嵩を増し、西から東に流れ、水はあるべきところから外れて、おとなしいご婦人のようであり、鳥が不安げな様子も無く降り立っていた。かくて河の水が嵩を増したことに不安を感じて、十頭の魔物は右手の指を示して、スカとサーラナを呼んだ。ラーヴァナの兵士として、二人の兄弟、英雄的なスカとサーラナは、空を飛んで西へ向かった。半リーグ(1 league = 5.55600 km)ほど行くと、二人の夜歩く者たちは、女たちに囲まれて水遊びする男を見つけた。彼はサーラの樹のように巨大で、髪は水に浮き、酒に酔い、目は赤くなっていた。千の足で大地を支えるスメルのように、彼は千の腕で河の流れを塞き止めていた。そして彼は千の牝象に囲まれた象のように、千の美しい乙女たちに囲まれていたのである。その恐るべき光景を見て、ラークシャサのスカとサーラナは、ラーヴァナに全てを報告するために戻った。「おお、ラークシャスの主よ、サーラの樹のごとく巨大な見知らぬ者がダムのようにネルブダ河を塞き止め、女たちと戯れております。その男の千の腕に止められて、ネルブダ河の水は高波をあげ続けておるのです。」スカとサーラナの言葉を聞き、ラーヴァナは叫んだ。「それこそアルジュナだ。」そして彼との戦いに赴いた。ラークシャサの主、ラーヴァナはカールタヴィリヤアルジュナに対する敵対心を固めた。風が埃を舞い上げ、騒々しい音をたてて吹き始めた。雲は土砂降りの雨のつぶやきを始めた。かくてラークシャサの主はマホダラ、マハーパルスワ、ドゥルマークシャ、スカとサーラナと共にアルジュナに対して侵攻した。間もなく、恐るべきラークシャサ、象のごとく強力なアルジュナ、ネルブダ河の岸辺に到着し、アルジュナが牝象に囲まれる象のごとく女たちに囲まれているのを見た。ラークシャサの主の目に彼の力の誇示が見え、真っ赤になってアルジュノ王の側近たちに示威して、彼は言った。「ハイハヤの王に告げよ、ラークシャサの主、ラーヴァナが彼と闘うために来た、と」ラーヴァナの言葉を聞いてアルジュナの家臣たちは武器を持って立ち上がり言った。「おお、よろしい。ラーヴァナよ、汝は今や戦いの時が来たと知るがよい。今、我らが王は宴にあり、水の中で女たちと戯れている。汝は彼と闘いたいと望んでいる。されば、おお、十頭の者よ、ここで夜を過ごし、汝は戦いに心を傾けよ。汝が心臆さず、ただちにアルジュノと雌雄を決したいとあらば、まずは我らを全て殺し、その後王と闘うのだ。」かくてラーヴァナの飢えた側近たちは、王の臣下の幾人かを殺し、幾人かを焼き尽くした。ネルブダ河の岸辺に、アルジュナとラーヴァナの部下たちの恐るべき騒動が起こった。アルジュナの戦士たちは百の矢、プラシャス、ダーツ、トマラ、雷、カルパナをもってラーヴァナに殺到した。アルジュナの戦士たちは猛烈な恐怖に陥り、深みに潜む鰐や魚、その他の水に住む怪物たちのような叫び声をあげた。怒り狂い、力を誇示しようと、スカ、サーラナら、ラーヴァナの家臣たちはアルジュナの兵士たちを打ち砕いた。かくて恐怖に襲われた使者が、遊行する王のもとへ、ラーヴァナとその部下たちが攻め入って来たことを報告に向かった。(王は)彼らの言葉を聞き、女たちにむかって言った。「恐れることは無い。」彼は象のように水から上がった。火のような目をしたアルジュナは、憤怒に赤く染まって全てを溶かす火のように恐ろしく輝いていた。素早く、いつも使う黄金の棍棒をつかむと、ラークシャスを、暗黒が太陽を追いかけるように追いつめた。巨大な棍棒をつかみ、腕で投げると、アルジュノはガルーダの速さで出立した。かくて彼を害そうとするラークシャサは、怒りをもって、その手にメイス(矛)を携え、黄道にそびえるヴィンディヤ山のごとく立ち上がった。彼の腕は、怒りに満ちて、ヤマのように、鋼鉄の矛を叩き付けた。矛の先端はアショカの花の先のように輝いた。その矛を見て少なからず心猛ったアルジュナ王は、棍棒をどうするか思案した。かくて巨大な棍棒は振り上げられ、五百本の腕が伸び、ハイハヤの王はプラハスタを追いつめた。瞬く間に棍棒の一振りが、偉大なる勝利者、プラハスタに贈られ、大地に倒れ伏した。それはインドラの雷(いかづち)が山の頂きを打ったかのようであった。プラハスタが倒れたのを見て、マーリチャ、スカ、サーラナ、マホダラそしてドゥルマークシャは戦場から逃げ出した。側近の全てが逃げ、プラハスタが殺されると、ラーヴァナはすばやく、最高の王たるアルジュノの前に進み出た。恐るべき睨み合いが続き、人間の王、千の腕のアルジュナとラークシャサの王、二十の腕のラーヴァナ、両者の間の(緊張は)上昇下降を繰り返した。棍棒を振り上げ、アルジュナとラーヴァナの戦いが始まった。それは、互いに渦巻く雲のように叫び声を発し、巨大なる二頭の牛の闘牛のよう、二つの海のぶつかり合い、二つの山、二人の光輝くアディティヤ、二つの燃え盛る炎、二頭の誇り高き象、二頭の気高き獅子、そしてルドラとカーラのようであった。幾度も打ち付ける落雷に苦しむ山のごとく。四方には、振り回される棍棒から発する雷鳴のような響きが鳴り渡っていた。アルジュナの棍棒がラーヴァナの胸を狙えば、そのとき、天は黄金が燃え盛るかのように光り輝く。繰り返し繰り返しアルジュノの胸を打ちつけるラーヴァナの棍棒は、まるで火で作られてあるかのようであった。アルジュナが消耗し、またラーヴァナが消耗した。両者の戦いは、古のバーラとヴァーサヴァの出会いのようであった。人間の王とラークシャサの王は互いの棍棒で傷つけ合った。それは闘牛のようであり、また二頭の象が牙で突き合うようであった。怒りに満ちてアルジュノは渾身の力で棍棒を敵の胸に打ち付けた。しかしラークシャサは天の恩恵により、倒れることはなかった。棍棒は大地に打ち付けられて二つに割れ放り出された。アルジュノの矛で負傷し、ラーヴァナは涙をためて距離をとろうとして、四フィートほど離れた。ラーヴァナが圧倒されたのを見て、アルジュナはガルーダが蛇を掴むように、ヴィシュヌがバーリを縛ったように、彼を捕まえた。ダシャグリヴァは(原文欠損)シッダ、チャラナそして天界の者たちは叫んだ。「いいぞ、良くやった!良くやった!!」アルジュナの上にに花々が散布された。王は再び獅子のような咆哮をあげ、雲のようにすばしこい鹿を捕らえて満足した虎の声を発した。意識を取り戻したラーヴァナはハイハヤの王の大いなる怒りで追いつめられ殺されたプラハスタを見た。ラークシャサの軍は、暴風雨にさらされた海のようであった。そして繰り返し叫んだ。「もうやめろ!もうやめろ!待て!待て!」ラークシャサの主は百のムサラを放り出し、戦場に投げつけた。敵を殲滅する者、アルジュナ王は近づき、天界の敵の武器を取り上げた。恐ろしげなラークシャサの武器を、素晴らしき者、ハイハヤの王、アルジュノは、風が雲を散らすように放り投げてしまった。夜歩く者たちは恐怖におそわれた。彼は、肉親たちに取り囲まれて、ラーヴァナを引き連れて街に帰った。インドラがバーリを引き連れて凱旋したように。ブラフマンたちと市民たちは彼に花々と揚げた米を散布した。

(つづく)
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by gatotkaca | 2011-10-23 14:16 | 影絵・ワヤン | Comments(0)

カルタヴィーリャ・アルジュナ その1

 ジャワのワヤンでのアルジュノソスロバウは、インド起源の人物ではあるが、ジャワとインドの説話では、相当な差異が生じている。まずは、元ネタとも言えるインド版アルジュノソスロバウの物語として、ヴァールミーキの「ラーマーヤナ」第七編『ウッタラ・カンダ』の36節から38節において語られる、アルジュナ・カルタヴィーリャの物語を紹介する。
 The RAMAYANA "UTTARAKANDAM ” edited & published by Manmatha Nath Dutt, Calcutta, 1894 をテキストとして英語からの重訳になるが、拙訳で紹介する。

ウッタラ・カンダ

36節

 かくして、アガスティヤ仙に拝跪し、ラーマは驚きながら再び言った。「おお、ブラフマン。輪廻に生きる者の中で最高の者よ、ラーヴァナが地上を旅する間、人々はいなかったのですか?王は?王子は?彼の罪をいさめる者は?すべての王はその力と能力を剥ぎ取られてしまったのでしょうか?様々な優れた武器をもってしても彼を除くことはできず、多くの王が敗れたとのことですが。」ラーグハヴァの言葉を聞き、六種の徳をそなえた苦行者アガスティヤは笑いながら、ブラフマーがルドラに話すがごとく言った。「おお、ラーマ。おお、地上の主よ。地上を巡るラーヴァナは、天界に見紛うほどの街、マヒシュマティの街に到着した。そこは火の神が永久におわすところ。そこに君臨する王の名はアルジュノ。サラに守られた永遠の火のごとく燦然と輝く王である。ある日、高貴にして強力なるハイハヤの王、アルジュノは妃を遊ばせるためにネルブダ河に遊行した。その日、ラークシャサの主、ラーヴァナはそこに到着し、側近たちに尋ねて言った。「アルジュナ王はどこだ?汝らは疾く告げよ、我はラーヴァナなり。汝らの王と戦いにやって来た。汝らはまず、我が到着を彼の者に告げよ」かようなるラーヴァナの口上を受け、学識ある大臣たちはラークシャサの主の情報を知らしめ、王の不在に対処した。市民たちから王の不在を耳にしたヴィシュラバスの息子は街から引き上げ、ヒマラヤに似たヴィンディヤ山に至った。彼は雲のごとく蒼穹にまたがり、大地の活力のごとく盛り上がり、空を遮る山を見つけた。山は千の頂きをもち、洞窟には獅子が住み、何百という泉が湧き出ていた。山は、笑いに満ち、天界のガンダルバ、アプサラ、キンナラたちが女たちと戯れて、天界の一部のようであった。水晶のように透明な水をたたえる河が流れ、千の蛇が舌を震わせるようであった。彼のヴィンディヤ山はヒマラヤのごとき外観を呈し、巨大な洞窟を持っていた。ラークシャサの王、ラーヴァナはネルブダ河に至った。聖なる水は西方の大洋へ注がれていた。その水は水牛、鹿、虎、獅子、熊たちに掻き回され、熱気が象たちを困らせた。その水に覆われて、チャクラバカ、カーランダヴァ、白鳥、水鳥そしてサーラサスは猛り狂い、音を放っていた。麗しい乙女のごとき魅惑的なネルブダ河は、樹々を茂らせその飾りとし、チャクラバカはその息吹、広がる森はその腰、メクハラから白鳥が列をなし、花の繊維が添付され、泡立つ水は絹の布地、水に飛び込む喜びはそれに触れる歓喜となり、芽吹く蓮の花は白い目となる。車から降りてネルブダ河の水に浸かれば、最高の流れ、美しいものであった。ラークシャサの主、ラーヴァナと側近たちは、多くの苦行者たちの住まう、その岸辺に落ち着いた。美しく輝くネルブダ河の高貴さはガンジス河のようだと語り、彼は、大臣のスカとサラナに身振りを交えて口上した。「観よ、光にみちて描き出される蒼き地上のさまを。太陽は中天で熱を放つ。しかしここに座す我を見よ、太陽の光は月のよう冷ややかだ。我を恐れて、風も優しげに吹き、ネルブダ河の水の感触も冷たく香り高く、我らをねぎらっておる。この魅惑的なネルブダ河よ、鰐、魚、そして鳥にあふれている。ゆるやかな流れはおびえた乙女のよう、静かに佇んでいる。多くの王との諍いで傷を負い、そなたらは血にまみれておる。されば、サルヴァバウマのよう、怒れる象がガンジス河の水に入るように、さあ、汝らもネルブダ河の水に入って、吉祥と健康を授かるがよい。この流れに身を浸せば、そなたらの罪も洗い清められよう。わしもまた秋の月の光のような河の岸辺で、その腕にピナーカを抱く、マハーデーヴァの花々に敬意を込めて礼拝しよう。」ラーヴァナの言葉を聞き、プラハスタ、スカ、サラナ、マホダラ、ドゥルマクシャそのほかの側近たちはネルブダ河の水に入った。河はヴァマナ、アンジャナ、パドマたち象を受け入れるガンジス河のように、象のようなラークシャサたちにかき乱された。かくて高貴にして強力なラークシャサたちは水から上がると、花を摘み、ラーヴァナに捧げた。間もなくラークシャスたちは絵のようなネルブダ河の岸辺に花を積み上げ、それは白い雲のようであった。集められた花々はラークシャサの王、ラーヴァナが巨大な象がガンジス河に入るよう、沐浴するとネルブダ河に散布された。沐浴が済み、特別な祈りが唱えられた。そして濡れた布が白い布の上に置かれた。祈りの場所を見出し、彼は腕を畳むと、岸辺を進んで行った。ラークシャサたちもまた、山々が動くように彼の後に付き従った。ラーヴァナはどこへ行くにも黄金のシヴァ・リンガを持っていた。かくてラーヴァナは、砂を積み上げ、様々な蜜の香りたかい花々を捧げ、サンダルをはいて祈りを捧げた。シヴァへの祈りを終えると、王冠に月をあしらう、ダイティヤ最高の者は、恩恵を授かり、災難を除くため、腕を振り上げて夜歩く者の踊りを踊り、その前に唄を歌った。
(つづく)
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by gatotkaca | 2011-10-22 23:58 | 影絵・ワヤン | Comments(0)