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木から落ちた猿

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2013年 05月 08日 ( 1 )

ワヤンとその登場人物〜マハバラタ 第14章

14. デウィ・オムボ、愛を退けられ、ビスモに復讐を誓う

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 カシ Kasi 国の話である。三人の王女がサユムボロ・ピリ sayembara pilih つまり婿選びの儀の壇上に立っていた。奇妙ではあるが古からの風習なのだ。慣習によれば、成人した娘は夫を選ばなければならない。美しければ当然さまざまな国から貴族や王子たちがサユムボロに参集してくることになる。ビスモも、これを見逃しはしなかった。アスティノプロ王国の王子であり、唯一の後継者たる彼もサユムボロに参集したのである。ビスモの到来はサユムボロの他の参加者たちを、おおいに不安にさせた。なぜ?偉大な英雄にして賢者の誉れ高いビスモ、彼の超能力と力は並大抵ではない。
 「ビスモは何のために来たのだ?」参加者たちは囁き合った。「彼はブラフマチャリヤ Brahmacariya ではないか。一生結婚しないと誓ったはずだ。誓いを違えるつもりか?」
 カシの王女たちもビスモの到来を心に留めた。ビスモが来るのを遠くから眺め、彼はきっとサユムボロを見物に来ただけで、参加するつもりはないのだろうと思った。しかし彼女たちの考えは誤っていた。ビスモはサユムボロの準備を整えた王子たちと、三人の王女たちが彼の視線を避けるのを見て、血を登らせていた。サユムボロの参加者たちに一人ずつ挑戦し、決闘が開始された。誰一人としてビスモの超能力に拮抗し、負かしうるものはいなかった。すべての王子たちは敗れたのである。かくて彼はすぐさまカシの可憐な三人の王女を奪い去り、輝く馬車に乗せると、ボーイング747が飛び立つように素早く『テイク・オフ(離陸)』して、カシ国を去っていった。ボーイング747とビスモの馬車の違いは、ボーイング747なら熱いガスを吐き出しながら飛ぶところを、ビスモの馬車は耳をつんざくような音も熱いガスもなく、ただ涼しい風を巻き上げて行くばかり。集まっていた王子たちはみな目をくらまされているばかりであった。
 しかし不運にも、ビスモの馬車の前にサウボロ Saubala 国のプラブ・サルヴォ Salva が立ちふさがった。サルヴォは元々、オムボ(カシ国の三王女のひとり)と恋仲であった。ビスモとサルヴォの決闘は避けられないこととなった。サルヴォが敗れ、ビスモに殺されそうになった時、オムボがビスモに思いとどまるよう頼んだ。危機一髪だったサルヴォはオムボのお陰で助かったのである。サルヴォへの愛ゆえに、アスティノプロ国に着くや否やビスモの前にたち、オムボは冷ややかに言った。
 「ビスモよ、ヴェーダの教えを想い起こしてください。ヴァーダの教えを破るおつもりなのですか?私を自由にしてください。私は愛するプラブ・サルヴォにお仕えしたいのです。」
 ビスモはオムボの願いを受け入れ、デウィ・オムボは士官たちに随行されて馬車でプラブ・サルヴォのもとへ送り届けられた。デウィ・オムボは泣きながらプラブ・サルヴォの前に出て拝跪した。
 「ああ、私の心は決まっております。私はスリ・マハラジャ・サルヴォ様にお仕えしたいのです。私を妻にしてくださいますよう。」
 「ああ、デウィ・オムボ。遅すぎたのだ。」サルヴォは答えた。「私にはそなたを受け入れることはできない。私は皆の前で敗れた。そなたはビスモについていった。世の男どもは私を卑しい者と言うであろう。ビスモのもとへ帰るのだ。彼に従うが良い。」
 かくてデウィ・オムボは悲しさと恥辱のない混ざった心持ちでビスモのもとへ戻った。ビスモはデウィ・オムボを受け入れるようにとウィチトロウィルヨを説得しようとしたが、彼はすでにサルヴォ王に心を捧げた彼女を拒んだ。きっぱりと拒まれたことを聞き、デウィ・オムボの心は粉々になった。彼女はまたサルヴォ王に仕えようとしたが、サルヴォもまた彼女を頑に拒んだのである。
 デウィ・オムボの心は打ち萎れた。フラストレーションが溜まり、憂鬱になった。人生は不安定となり、愛も無く、恋も無く、希望も無い。美しかった容姿も今や『老人 kempong perot 』のようになり、輝きも失われ、死人のように青ざめてしまった。苦しみと悲しみは、ついにビスモにたいする烈しい憎しみと怨みに変わった。彼女はビスモに人生を狂わされたと信じた。デウィ・オムボはあても無く彷徨い、ルシ・パラスロモ Parasrama (ロモパラス)の苦行所に着いた。デウィ・オムボは地に伏して、彼女の身に降り掛かった不運を物語った。ロモパラスは言った。ビスモに対抗できる者はこの世にいない。彼はデウィ・オムボに助言した。もう一度ビスモのもとへ戻り、かれに自分の運命を委ねるのだ。それが唯一の道だと。さてどうなるのだろう?

1976年10月24日 ブアナ・ミング
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by gatotkaca | 2013-05-08 06:35 | 影絵・ワヤン | Comments(0)