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木から落ちた猿

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「バラタ・ユダ」スナルディ著 試訳 その5

アスティノの人々


ラデン・ヨモウィドゥロ

 アスティノの長老には、他にも、つねにコラワに対して良識ある忠告をし続ける人がいる。それはラデン・ヨモウィドゥロである。彼はブガワン・アビヨソの第三子で、ダストロストロとパンドゥデウォノトの弟である。超能力の人だが、不具の身で跛である。


 彼は賢者であり、法の専門家で、アスティノの相談役に任じられている。パンダワとコラワの紛争が起こるたび、彼はつねに公正の見地から、公平な意見を述べる。


 まだ若い頃、パンゴムバカン Pangombakan の王、プラブ・ディポチョンドロ Prabu Dipacandra から助けを求められ、敵と戦った。敵はトゥングルモロヨ Tunggulmalaya 国のプラブ・デウォスラニ Prabu Dewasrani と超能力の大臣バフドゥンド Bahudenda である。

 プラブ・ディポチョンドロの美しい娘デウィ・パドマリニ Dewi Padmarini を奪おうとする敵を敗ったのである。


 ボノクリン Banakeling という名の国があった。その王はプラブ・ブガワン・サプワニウィジョヨワストロ Prabu Bagawan Sapwaniwijayawastra という。王は超能力の人で、熱心に苦行に励んでいた。願いがあり、神の助けを求めていた。


 ある日彼が瞑想していると、とつぜん近くにあるものが落ちて来た。それは赤子のブロトセノの胞衣(えな)であった。


 ブロトセノは産まれた時、胞衣に包まれたままであった。いかなる武器を持ってしてもその胞衣を破ることはできなかった。コラワ百王子があらゆる武器を放ったが、無駄であった。

 パンドゥデウォノトは瞑想を続け、そのあまりの激しさにチョンドロディムコ Candradimuka 火山の水が煮えたぎった。ブトロ・グル Batara Gur がそのわけをヒワン・ナロドに尋ねると、パンドゥデウォノトが赤子の胞衣を破る助けを求めているとのことであった。

 ブトロ・グルは、セノ Sena という名の象を連れてナロドにアスティノ国へ向かうよう命じた。その象こそ赤子の胞衣を破ることのできる者であると。


 ヒワン・ナロドはアスティノ国に来て、到来のわけを話した。パンドゥデウォノトはおおいに喜んだ。ガジャ・セノは、まだ胞衣に包まれたままのパンドゥの子がおかれた庭に運ばれた。胞衣に包まれた赤子は、破ってくれとせがむようにあちこちに転がった。


 かくてガジャ・セノは、赤子の胞衣を踏みつけた。すると胞衣が破れた。赤子が誕生し、ヒワン・ナロドに抱かれた。

 ブトロ・グルの意志に沿い、赤子はアルヨ・セノ Arya Sena またブロトセノと名付けられた。パンドゥデウォノトの一家は喜んだ。ヒワン・ナロドは去っていった。空へ舞い上がり、ブロトセノの胞衣を持って行った。

 胞衣はヒワン・ナロドによって遠くへ放り投げられ、ボノクリン国へ飛び、瞑想するブガワン・サプワニの近くに落ちたのである。


 ブガワン・サプワニは困り果てていた。というのも愛する妻が、結婚して長いにもかかわらず子供に恵まれず、彼と別れたいと言うのである。

 空からとつぜん何かが落ちて来た。彼は調べてみた。サン・ブガワンは、それが赤子の胞衣であることを知った。すぐさま祈りを捧げる。するとブロトセノの胞衣が、立派な男の子に変わった。夫婦は大いに喜び、赤子をラデン・ジョヨドロト Raden Jyadrata と名付けた。

 ジョヨドロトの容姿はブロトセノに似ており、ガトコチョとそっくりであった。成長したジョヨドロトは、ラデン・ブロトセノに仕えることを願った。

 しかしその途中で、パティ・スンクニと出会い、アスティノ国に仕えるよう説得された。アスティノ王は裕福な王で、さらにスンクニは、ジョヨドロトに高位の官職を約束し、プラブ・スユドノの妹デウィ・ドゥルシロワティ Dewi Dursilawati との結婚も約束したのだった。

 スンクニの企みは成功した。ジョヨドロト、またの名ティルトノト Tirtanata またシンドゥルジョ Sindureja は、ついにアスティノ国に仕えることを承知し、後の日の大戦争バラタ・ユダではセノパティ senapati 〈戦闘指揮官〉を務めることになる。


 アスティノのセノパティにはバムバン・アスウォトモ Bambang Aswatama もいる。彼はパンディト・ドゥルノの一人息子である。母はビダダリのひとり、デウィ・ウィルトモ Dewi Wilotama である。アスウォトモは大いなる超能力の人である。彼は強力な矢の形をした武器、熱い炎を発するチュンドマニ Cundamani を持つ。彼はコラワに味方し、戦術を献策する。

 彼はパンダワを敵視し、アスティノ王妃デウィ・バヌワティを憎んでいる。彼女が、内心はパンダワの味方であると見ているのだ。


 プラブ・スユドノの王妃デウィ・バヌワティは、モンドロコ国王プラブ・サルヨの第三子である。彼女はひじょうに美しい。その美しさは素のものであり、宝石や装飾品に飾られてのものではない。彼女は飾らない時がより美しいのである。

 その行動は気まぐれで、彼女は怒ったり、厳しい表情をしている時のほうがより可愛らしく見える。彼女は最初のときから、パンダワの真ん中 panengah プルマディを愛している。

 デウィ・バヌワティはプラブ・スユドノの妃となるにあたって、いつでもプルマディ、つまりアルジュノと会うことが許されることを条件にした(「クルパティの結婚」参照)。

 こうしたバヌワティの振る舞いが、アスウォトモの憎しみを買い、報復に走らせるのである。


 アスティノ国の大臣、アルヨ・スンクニ Arya Sakuni はアスティノの皇太后デウィ・グンダリの弟である。彼はダストロストロが王位に就いた時から大臣となった。パティ・スンクニは弁舌に優れるが、正直とは言えない。彼は多くの策謀を謀る。耳障りの良いことばかり言う。聞く者に愛情があるかのように聞こえるのだ。パティ・スンクニはスユドノの第一の相談役である。


 ラデン・ブリスロウォ Raden Burisrawa はモンドロコ王プラブ・サルヨの第四子である。彼はコラワに味方する。背丈高く、顔はラクササである。祖父がラクササだからである。彼はブガワン・バガスパティの後裔なのである(プラブ・サルヨの項参照)。

 彼は、アルジュノの妻デウィ・ウォロ・スムボドロに恋していた。ウォロ・スムボドロと結婚できなければ妻帯しないと誓っていた。彼は自身の誓い通り、死ぬまで妻帯しなかった。ブリスロウォの顔はラクササである。彼はそれを恥じて、王の謁見所で父と対面する時も、つねに幕で仕切られた場所に座していた。

 プラブ・スユドノの義弟として、またアディパティ・カルノの義弟、さらにプラブ・サルヨの息子でもあることから、コラワに味方した。


 コラワのひとりであるラデン・カルトマルモは優れた戦士であった。彼はプラブ・ダストロストロの息子であり、バニュティナラン Banyutinalang のアディパティ adipati 〈領主〉である。

 カルトマルモはたびたび重要な戦いでセノパティに選ばれた。


 ラデン・ドゥルソソノはダストロストロの次男である。彼はバンジャルジュングト Banjarjungut のアディパティである。彼は父母、兄たちに溺愛された。甘えん坊で、威張りん坊、わがままな気性である。アスティノには彼を諌める者がいなかった。下品に、いつも笑いながら喋る。

 じっと座っていることができず、いつも落ち着きがない。歩く時も座っている時も、つねに右手をぶらぶらさせている。

 プラブ・スユドノの他の弟たちは、よく名前だけは呼ばれるが、特にこれといった超能力を持たない。チトラクソ、チトラクシ、ドゥルマガティ、スダルゴ Sudarga 、スダルモ Sudarma 、ウィロジョヨ Wirajaya 、スセノ Susena 、サトルジョヨ Satrujaya 、ジョヨスクティ Jayasekti 、ジョヨウィコト Jayawikata 、ジョヨダルモ Jayadarma 、ウパチトロ Upacitra 、チャルチトロ Carucitra 、チトロダルモ Citradarma 、チトロセノ Citrasena 、チトロディルガントロ Citradirgantara 、チトロムルティ Citramurti 、チトロウィチトロ Citrawicitra 、スロスディルゴ Surasudirga 、ディルゴスロ Dirgasura 、ユタユニ Yutayuni 、ユトユト Yutayuta 、セノチトロ Senacitra 、ドゥルゴアモン durgaamong 、ドゥルゴパティ Durgapati 、ドゥルゴアンソ Durgaangsa 、ダルモ Darma 、ドゥルガント Durganta 、ドゥルガントロ Durgantara 、ダルモユド Darmayuda 、ユドカルティ Yudakarti などである。



パンダワとコラワ以外の人々


 プラブ・マツウォパティ Prabu Matswapati はウィロト Wirata 国の王である。ウィロト国はパンダワとコラワの時代よりも古くからある国だ。

 妃はデウィ・レコトワティ Dewi Rekatawati である。彼には三人の息子、ラデン・セト Raden Seta 、ラデン・ウトロ Raden Utara 、ラデン・ウラトソンコ Raden Wratsangka があり、娘のデウィ・ウタリ Dewi Utari がいる。

 一族はすべてパンダワの味方となった。プラブ・マツウォパティはパンダワの相談役でもあり、パンダワが悲惨な境遇にある時は、彼らが若い頃からいつも手助けした。


 ラデン・セトはウィロト国王プラブ・マツウォパティの長子である。彼の名セトは、その肌が白いことに由来する。ラデン・セトは勇敢で超能力のサトリアである。彼は優れた戦闘指揮官で、パンダワの味方についた。


 ラデン・ウトロはウィロト国王マツウォパティの次男であり、ラデン・セトの弟である。兄セトと同様に、戦闘においては勇敢で超能力の持ち主である。粘り強い戦闘指揮官であり、パンダワの味方についた。


 ラデン・ウラトソンコはプラブ・マツウォパティの三男である。兄たちウトロとセト同様に、勇敢な戦士であり、超能力の人である。彼も強靭な戦闘指揮官であり、パンダワについた。パンダワが正義の側であるからである。


 プラブ・ドゥルポドはチュムポロルジョ国王である。彼は大いな超能力の人である。若い頃の名をスチトロという。二人の娘、デウィ・ドゥルパディとデウィ・ウォロ・スリカンディ Dewi Wara Srikandi がおり、息子はラデン・ドゥルストジュムノ Raden Drustajumena である。

 一族すべてがパンダワに味方した。デウィ・ドゥルパディはプントデウォの妃となり、デウィ・ウォロ・スリカンディはアルジュノの妻となった。

 デウィ・ドゥルパディはチュムポロルジョ国王プラブ・ドゥルポドの長女である。彼女はアスティノ国王プントデウォの妃となった。彼女は節度ある女性で、質素に暮らし、パンダワの行動に従った。かつてドゥルソソノに恥辱を受けたことがある。パンダワがサイコロ賭博でコラワに敗れた時、ドゥルソソノに引きずりまわされた。それだけでなく、結い上げた髪を解かれ、幾度も衣服をはぎ取られたのである。

 最初からコラワとパンダワの名を賭けたスユドノとプントデウォのサイコロ賭博に賛成していなかったダストロストロは、ヨモウィドゥロの意見を聞き入れ、デウィ・ドゥルパディに対して、二つの願いを叶えることを約束した。

 聡明なデウィ・ドゥルパディは、ただちに願いを述べた。第一の願いは、夫プントデウォを自由の身にすること、第二の願いは他のパンダワたちも解放することであった。二つの願いは聞き入れられた。さらにダストロストロの裁量で、コラワが勝ち取ったすべてのものは、パンダワに戻されたのである。

 アウォンゴ Awangga 国のアディパティ・カルノもデウィ・クンティの息子である。デウィ・クンティが、パンドゥデウォノトと結婚する以前、彼女は妊娠した。その妊娠は、ブガワン・ドゥルウォソ Bagawan Druwasa から与えられたイルムによるものであった。それは太陽の下で唱えてはならないとされていた。この禁則に反すれば、妊娠することになる。しかしデウィ・クンティは禁則を忘れ、違反した。かくて結婚前に妊娠することとなったのである。

 ブガワン・ドゥルウォソの手助けにより、デウィ・クンティの胎児は、耳の穴から産まれた。かくて嬰児は、耳の穴を意味するカルノと名付けられたのである。

 アディパティ・カルノは太陽神ヒワン・スルヨ Hyang Surya の子と認められ、スルヨプトロ Suryaputra と名付けられた。アディパティ・カルノはコラワの味方となった。彼はモンドロコ国王プラブ・サルヨの次女デウィ・スルティカンティと結婚した。プラブ・サルヨの長女はデウィ・エロワティである。彼女はマドゥロ国王プラブ・ボロデウォと結婚し、三女のデウィ・バヌワティはアスティノ王プラブ・スユドノと結婚した。

 ラデン・レスモノ・モンドロクモロはプラブ・スユドノとデウィ・バヌワティの息子である。彼は父を継いでアスティノの王となるべき皇太子とされた。しかし、彼にはさほどの超能力も無く、いつも嘲笑される。彼は未婚である。

 デウィ・スティヤワティ Dewi Setyawati はモンドロコ国王プラブ・サルヨの妃である。プラブ・サルヨと結婚する前は、その名をデウィ・プジョワティといった。彼女はパンディト、ブガワン・バガスパティの子である。彼女は死にいたるまで、夫にとても誠実であった。この女性は五人の子をもうけ、愛する夫と争ったことがなかった。それどころかこの夫婦二人はいつまでも新婚のようであった。彼女の子はデウィ・エロワティ、デウィ・スルティカンティ、デウィ・バヌワティ、ラデン・ブリスロウォ、そしてラデン・ルクモロトである。


 ラデン・ルクモロトはプラブ・サルヨの末子である。兄のブリスロウォのようにラクササの風貌ではない。ルクモロトは美男子であった。彼は良識をそなえ、超能力もあった。

 プラブ・クレスノはドゥウォロワティ国王である。彼はマドゥロ国王プラブ・バスデウォの息子である。若い時の名をノロヨノという。彼はパンダワの守護者である。プラブ・クレスノは国交交渉、戦争、その他に卓越した戦略を発揮する。


 プラブ・クレスノはティウィクロモ Tiwikrama することができる。それは超能力の比類無き、聖なる巨大なラクササとなることである。

 スリ・クレスノはチョクロ Cakra という武器を持つ。それはバトロ・ウィスヌ Batara Wisunu の化身だけが所持し、使うことのできる武器である。彼はまた、ウィジョヨクスモ Wijayakusuma の花を持つ。それはまだ死ぬ運命にない人を生き返らせることができる。


 プラブ・クレスノは機智に富んだ性格だが、上品で良識あふれている。彼には四人の妃がいる。猿のパンディト、カピ・ジュムバワン Kapi Jembawan の娘デウィ・ジュムボワティ Dewi Jembawati 、クムビノ Kumbina 国王プラブ・ルクモ Prabu Rukma の娘デウィ・ルクミニ Dewi Rukmini 、レサムプロ Lesampura 国のプラブ・スティヤジト Prabu Setyajid の娘デゥイ・スティヨボモ Dewi Setyabama 、そしてヒワン・オントボゴの娘デウィ・プルティウィ Dewi Pretiwi である。


 デウィ・ジュムボワティとの間には、ラデン・ソムボ Raden Samba という息子がいる。デウィ・ルクミニとの間には、娘デウィ・シティ・スンダリ Dewi Siti Sundari が、デウィ・スティヨボモとの間にはラデン・スティヨコ Raden Setiyaka 、デウィ・プルティウィとの間にはプラブ・ボモノロカスロ Prabu Bamanarakasura という息子がいる。

 ラデン・ソムボはドゥウォロワティ国王プラブ・クレスノとデウィ・ジュムボワティの息子である。彼はハンサムで、顔を上げ、大きな声で話し、弁舌に長けている。彼は機智に富み、粋な性格である。ただ、超能力には恵まれていない。


 ラデン・スティヤキ Raden Styaki はレサムプロ Lesampura 国王プラブ・スティヤジト Prabu Setyajid の息子である。プラブ・スティヤジトは若い頃の名を、ラデン・ウグロセノ Raden Ugrasena といい、マドゥロ国王プラブ・バスデウォの弟である。スティヤキはレサムプロ国の皇太子でありながら、年長の従兄弟であるドゥウォロワティ国王プラブ・クレスノにしばしば付き従っている。

 スティヤキは熟達した戦闘指揮官であり、大いなる超能力を持ち、黄金色の鉄のゴド〈棍棒〉を武器として持つ。彼はパンダワに味方し、しばしば小さなビモを意味するビモ・クンティン Bima Kunting と呼ばれる。


 デウィ・シティ・スンダリはプラブ・クレスノとデウィ・ルクミニの娘である。彼女はアルジュノの息子ラデン・オンコウィジョヨを夫とした。彼女はひじょうに夫に献身的であったが、子供に恵まれなかった。

 ラデン・オントルジョ Raden Antareja またの名ラデン・オントセノ Raden Antasena は、ラデン・ウルクドロ Raden Wrekodara 〈ビモ〉の長子で、デウィ・ノゴギニの子である。オントルジョの祖父は、七層の地界の蛇の神ヒワン・オントボゴであったので、オントルジョは神の後裔に数えられる。


 彼は地中でも生きられ、地界に残った。必要な時だけ地界から顔を出す。オントルジョの超能力は父を超える。彼は蛇のように駈け、毒を吐くことができる。足跡をなめれば、毒が相手を追いかけ、その者は死ぬのである。

 プラブ・クレスノは、バラタ・ユダが起ころうとした時、オントルジョが無敵であることを知った。彼がパンダワに味方することは確実である。そこでスリ・クレスノは、大戦争バラタ・ユダが起こる前にオントルジョを騙し、ある人の足跡をなめさせた。オントルジョはそれが自分の足跡だと知らなかった。足跡をなめると彼は死んだ。


 ラデン・ガトコチョはラデン・ウルクドロ、つまりビモの次男で、デウィ・アリムビの息子である。彼はプリンゴダニ Pringgadani 国の王となった。

 産まれたとき、彼はラクササ姿であった。彼はおおいなる超能力の人である。彼のへその緒を切ることのできる武器はひとつも無かった。最後に彼のへその緒は、アウォンゴ国のアディパティ・カルノの持つ武器クント senjata Kunta でやっと切ることができたのである。しかし、武器の鞘がガトコチョの腹の中に入ってしまった。こうして彼の超能力は倍加したのである。


 神々によって赤ん坊のガトコチョは、チョンドロディムコ火山の火口に入れられ、あらゆる超能力を体内に取り入れた。それゆえ、ガトコチョは鋼の筋肉、鉄の骨を持つ者となり、いかなる武器にも打撃にも耐え得る者となった。

 彼は雲の上に飛び、雲に座り、雲に横たわることができる。飛ぶ速さは光のごとく、激しさは雷のようである。戦いでは、彼は敵の首をねじ切る。

 ガトコチョはいとこである、アルジュノの娘デウィ・プルギウォ Dewi Pregiwa を妻に持つ。デウィ・プルギウォに出会う前のガトコチョは冴えないクサトリアであった。彼女を見てからは、恋の矢に当てられ、身仕舞を正し、おしゃれもするようになり、デウィ・アリムビは喜んだ。


 ラデン・ポンチョウォロはアマルト国王プラブ・プントデウォとデウィ・ドゥルパディの息子である。彼はウルクドロの養子となった。父母と同様、ポンチョウォロは節度ある人で、つねにパンダワの意向に付き従い、その顔は穏やかである。

 ラデン・オンコウィジョヨは、アルジュノとデウィ・ウォロ・スムボドロの息子である。幼い頃の名をアビマニュという。第一夫人はプラブ・クレスノとデウィ・ルクミニの娘、デウィ・シティ・スンダリである。

 この結婚には子が恵まれなかった。大戦争バラタ・ユダの直前、オンコウィジョヨはウィロト国王プラブ・マツウォパティの娘、デウィ・ウタリを娶った。デウィ・ウタリは彼より年上で、祖母くらいの年であったが、神の恩寵により若く美しいままだった。

 オンコウィジョヨは父母からとても愛された。従兄弟のガトコチョも彼をとても愛した。

 ラデン・オンコウィジョヨはワヒュウ・チャクラニングラト Wahyu Cakraningrat 〈ワヒュウは天啓を意味する〉を獲得した。そのワヒュウを手に入れた者は、その子孫がジャワの王になるというものであった。

 バムバン・イラワン Bambang Irawan はアルジュノと、ヨソロト Yasarata の苦行所のルシ・カンワ Resi Kanwa の娘デウィ・ウルピ Dewi Ulupi の息子である。彼は大いなる超能力を持ち、普段は母の苦行所に住んでいた。パンダワたちの国に事あれば、すぐに駆けつける。

 デウィ・ララサティ Dewi Rarasati はマドゥロ国王プラブ・バスデウォのかかえる牛飼い、オントゴポの娘である。しかし、その実はララサティはプラブ・ビスモコ Prabu Bismaka の隠し子であったのだ。

 彼女はドゥウォロワティのパティ・ウドウォ Udawa の妹である。美しい娘で、その振る舞いも心根も王族の娘のようであり、アルジュノの心をおおいに惹きつけた。彼女はアルジュノの側室になった。ララサティはアルジュノにとても献身的であった。アルジュノに何か教えてもらうと、完全にできるまで練習した。彼女は弓術に優れていた。それゆえ、女戦士のひとりとして活躍した。

 ラデン・ドゥルストジュムノはチュムポロルジョ国王プラブ・ドゥルポドの息子である。彼は勇猛なクサトリアであり、パンダワに味方した。彼には欠点があり、それは時折、我を忘れることである。感情にまかせて暴走し、仲間から非難されることもあった。


パンダワとコラワの間の敵意が激しさを増す


 パンダワ一族とコラワ一族の間の敵意は日増しに強まっていった。プラブ・ボロデウォがコラワの味方についてからは殊更であった。プラブ・ボロデウォは妹のデウィ・ウォロ・スムボドロがアルジュノつまりプルマディに嫁いで以来、コラワの側についた。

 サン・プラブは、妃デウィ・エロワティの弟ラデン・ブリスロウォのほうが妹に相応しいと考えていたのである。同じようにプラブ・クレスノの娘デウィ・シティ・スンダリも、アルジュノの息子ラデン・オンコウィジョヨ、つまりアビマニュに嫁いだ。

 サン・プラブは姪っ子には、プラブ・スユドノの息子レスモノ・モンドロクモロが相応しいと考えていた。レスモノ・モンドロクモロの母はバヌワティ妃であり、彼女はマドゥロ国王妃デウィ・エロワティの妹だからである。


 プラブ・クレスノは、後のバラタ・ユダにおいて、おおいなる超能力のプラブ・ボロデウォを敵にすることはできないと考えた。かくて大戦争バラタ・ユダが起こる前に、プラブ・ボロデウォはスリ・クレスノに騙され、グロジョガン・セウ Grojogan Sewu の苦行所に追いやられてしまった。これはコラワ側に兄がいたのでは、パンダワの重荷になってしまうと、プラブ・クレスノが判断したからでもある。

 アスティノ国の半分でもパンダワに返還するようにとの交渉も失敗におわり、とうとう大戦争バラタ・ユダは避けられないものとなってしまった。


(つづく)


by gatotkaca | 2014-08-17 12:10 | 影絵・ワヤン
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