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木から落ちた猿

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ワヤンの女たち 第13章

13. デウィ・グンダリ、盲目の夫にならって、目を閉じて生きた妻

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 プラブ・スウォロ Suwala はグンドロ Gendara 国の王である。彼の心は不安だった。というのも、ひとり娘のデウィ・グンダリ Gendari がアスティノ国の王子デストロストロ Destrastra と結婚することになったのだが、彼は盲目であったからだ。はじめのうち彼は断ったのだが、「伴侶となる人は、王族の高貴なる人だ」と言われ、人柄への懸念は無くなった。決定を下したものは誰か?すべては『運命 』によって定められてあるのだ。ことわざに言う。山の中のアサム asam 〈タマリンド〉と海の中の塩は、鍋の中で出会うと。そしてグンダリにとって、父の望みに沿う以外の選択肢は無かったのである。彼女は夫に合わせて両目を黒い布で覆い、もはや太陽の輝きを見ることができないようにした。『信じられない? Apa tumon? 』。ああ、ワヤンの時代の女性はすごいのです。
 ここで疑問がわく。彼女は誠実 setia なる女性の象徴と言えるのか、それとも夫の盲目に(盲目的に)従っただけのことなのか。まずは、物語を続けよう。かくてアスティノ国ではデストロストロの婚礼の宴が催された。幾月かが過ぎ、グンダリはしばしば吐き気をうったえ、酸っぱい果物をほしがるようになった。ルジャ rujak やロティス lotis 〈フルーツサラダ〉を毎日食べていたのである。だるそうにして、怒りっぽくなった。女官たちはわけがわからなかった。
 王の子が王の嫁となり、十分すぎるほど甘やかされていたのである。出産の時が来て、アスティノ国の長老たちは大騒ぎとなった。というのも、とつぜん大雨が降り出し、つづいて稲妻が轟いた。象たちが吠え、森の野犬たちが一晩中遠吠えした。
 つまり、その夜は鳥肌が立つほど気味の悪い夜であったのだ。さらに森のなかでは一晩中プリットガンティル pritgantil 鳥〈雀のような鳥の一種〉がさえずり続けていた。
 まさしく生まれた赤子は泣きごえの代りに、森の狼のように吠え声をあげたのである。その声はじつに恐ろしげなものであった。スメル山 Semer 〈須弥山〉の冷えた溶岩が水を押し出す「轟音 kemrosak swara 」のようであった。人々はパニックになり、街中の者たちが安全を求めて右往左往した。彼らは鉄砲水がアスティノに押し寄せるとでも思ったのである。
 デストロストロは何が起こっているのかわからず、ヨモウィドゥロ Yamawidra に説明を求めた。
 「おお、弟ヨモウィドゥロよ。赤子が生まれると同時におこった気味の悪い音は、何の前触れであろうか?」
 「ああ兄上。」ヨモウィドゥロは答えた。「これらの音は狂気の時代の到来を知らせるものに他なりません。ですからこの肉塊〈グンダリが産んだ赤子は肉の塊であった〉は川に捨てられるのがよかろうと思われます。この肉塊は後の日におおいなる災いをまねくでありましょう。」
 ヨモウィドゥロの提案はデウィ・グンダリとデストロストロに拒まれた。さらに彼は言った。
 「ならぬ。生かしておくのだ。私はこれが人間となり、アスティノ国の王になってほしいと願っている。」
 血まみれの肉塊だった赤子は、かくて二つに切り分けられた。一片が人の赤子の姿となり、ドゥルユドノ Duryudana と名付けられた。他の一片は百個に分かれそれぞれが赤子になった。彼らはユユツYuyutsuh 、ドゥルソソノ Dursasana 、ドゥソホ Dusaha 、ドゥソロ Dusala 、ジョロソンド Jalasanda 、ソモ Sama 、ソホ Saha 、ウィンド Winda 、アヌウィンド Anuwinda 、ドゥルラルソ Durdarsa 、スバウ Subau 、ドゥスプロダルソ Duspradarsa 、ドゥルマルソノ Durmarsana 、ドゥルムコ Durmuka 、ドゥスカルノ Duskarna 、カルノ Karna 、ウィウィンサティ Wiwingsati 、ウィカルノ Wikarna 、ソロ Sala 、サトワ Satwa 、スルチョノ Sulucana 、チトロ Citra 、ウパチトロ Upacitra 、チトラクソ Citraksa 、チャルチトロ Carucitra 、ソロソノ Sarasana 、ドゥルモド Durmada 、ドゥルウィゴウォ Durwigawa 、ウィウィツ Wiwitsuh 、ウィコトノノ Wikatanana 、ウルノボノ Urnabana 、チトロワルマン Citrawarman 、スワルマン Suwarman 、ドゥルウィルチョノ Durwilucana 、アユバウ Ayubau 、ビモウォロ Bimawala 、バラキ Balaki 、ボロワルドノ Balawardana 、ウガユド Ugayuda 、ビモ Bima 、コノコヨ Kanakaya 、ドゥレドサンド Dredasanda 、ドゥレドワルマン Dredawarman 、ドゥレドサトロ Dredasatra 、ソモキルティ Somokirti 、アヌドロ Anudara 、ジョロソンド Jarasanda 、サティヨサンド Satyasanda 、サダス Sadas 、スバトソ Subatsa 、ウグロソウォ Ugrasawa 、ウグロセノ Ugrasena 、セナニ Senani 、ドゥスポロジョヨ Dusparajaya 、アポロジト Aparajita 、クンドソサジン Kundasasajin 、ウィソラクソ Wisalaksa 、ドロドロ Doradara 、ドゥレストハスト Drestahasta 、スハスト Suhasta 、ウォトウェゴ Watawega 、スワルチャス Suwarcas 、アディティヨケトゥ Adityaketu 、ワフワシン wahwasin 、ノゴドト Nagadata 、アグロヤイン Agrayain 、カワチン Kawacin 、クラトノ Kratana 、クンド Kunda 、クンドドロ Kundadara 、ダヌンドロ Danundara 、ウグロ Ugra 、ビモロト Bimarata 、ウィロバウ Wirabau 、アルルポ Alulupa 、アボヨ Abaya 、ルドロカルマン Rudrakarman 、ドゥレドロト Dredarata 、オノドゥレスヨ Anadresya 、クンダベディン Kundabedin 、ウィラウィ Wirawi 、ディルゴロチョノ Dirgalocana 、プラモト Pramata 、プラマティ Pramati 、ディルゴロモ Dirgaroma 、ディルゴバウ Dirgabau 、マハバウ Mahabau 、ウィユダルス Wiyudarus 、コノコドヨ Kanakadaya 、クンダシ Kundasi 、ビロジョ Biraja と名付けられ、最後に産まれた美しい女の子はドゥルシロワティ Dursilawati と名付けられた。*)

 さて、かくしてクロウォたちが、デウィ・ソト・グンダリ Sata Gendari から産まれた。ソトとは百を意味し、ソト・クロウォ Sata Kurawa とはコラワ百王子のことである。その意味するところは次回お話しよう。
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1976年12月5日 ユダ・ミング

*) クロウォ兄弟の名については異説が多い。完全に決まっているのはドゥルユドノ、ドゥルソソノくらいである。ここでの解説はインド版のそれに近い。また、百王子と一王女の場合もあれば、九十九王子と一王女とすることもある。

(つづく)
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by gatotkaca | 2013-07-15 13:27 | 影絵・ワヤン | Comments(0)
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