人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

木から落ちた猿

gatotkaca.exblog.jp

ワヤンとその登場人物〜ハルジュノソスロとラマヤナ 第30章

30. シント、ラウォノの子、欲望にかられて金の鹿を欲しがる

ワヤンとその登場人物〜ハルジュノソスロとラマヤナ 第30章 _a0203553_025561.jpg


 シントは本当は誰の子なのか?という質問をA・コサシ Kosasih 氏がブリタ・ブアナに送ってこられた。
 シントはラウォノの妃で天界の妖精ビダダリのひとり、バタリ・タリ Batari Tari (カヌン Kanun )の子であると人は言う。またシントはウィスヌ神の妃バタリ・ウィドワティ Batari Widawati の化身であるという人も少なくない。
 彼女が妊娠して7ヶ月、『ミトニ mitoni 〈妊娠7ヶ月のお祝い〉』が催された時、アルンコは騒然となった。産まれて来るその子が、(自身の父)ラウォノの『妃』になるとプンデト〈僧侶〉たちが予言したからである。ラウォノは頭に血が昇った。玉座に駆け上りカヌンの首を切り落とそうとした。だがその時ラウォノの脳にひらめきがあった。「産まれてくる子が美女かもしれぬ。そうであれば、このまま待ってみるか。」と。
 なんと欲深いことか!
 まさしくこの時ラウォノは遠征に出ており、その間に妃は満月のよう光輝く姿の美しい女の子を産んだのであった。聖なる心を持ち、人間性豊かな(ラウォノの弟)ウィビソノは、その子を取り上げるとすぐに米袋の中に入れた。かくてシントは河に流された。ウィビソノはその子の運命を神に託したのである。彼はすぐに黒い雲の塊から男の子を作った。これが後のメゴノンド Megananda またの名インドラジト Indrajit である。
 さて、マンティリ Mantili 国のプラブ・ジャノコ Janaka は苦行し、子どもを授けてくれるよう神に祈っていた。目を開くと彼は驚いた。河を漂う米袋の中から赤ん坊の泣き声が聞こえるではないか。彼は喜びのうちにその赤ん坊を拾い上げ、連れ帰って我が子とした。米袋の中から見つかったゆえに、その赤ん坊はシントと名付けられた。シントが17歳になると、国内の若者たちは言うに及ばす、国外の者たちも、若者たちは皆彼女に夢中になった。今や父は面倒を抱え込むこととなってしまった。それからやたらとかかって来る電話にも。というわけで彼の電話には『ロック』が掛けられたのである。
 『困り果てて saking judhegnya 』、嫁取り競技サユムボロが開催された。マンティリ国の伝来の宝弓を引くことのできた者は誰あろうとシントの伴侶となることができるのだ。
 婿候補のロモウィジョヨは、その頃ブラフマン・ヨギスロウォに師事して学んでいた。彼はサユムボロへの参加を表明した。苦もなくスリ・ロモが勝者となった。彼はウィスヌ神の『顕現 ngejawantah 』であるから当然である。マンティリとアヨディヨ両国で彼らの婚約と結婚が盛大に祝われた。しかし不運が二人をおそった。新婚の最中に、ロモの継母ケカイが王位を要求してきたのである。
 ロモの父ドソロトは王位をロモの弟バロトに渡すよう要求され、ロモ、シントそしてラクスモノは王宮を去り、森の中で13年間過ごすこととなったのである。
 森の中の暮らしで、シントは彼女をからかうように現れたキジャン・クンチョノ Kijang Kencana 〈金色の鹿〉を捕らえて飼いたいという思いを抑えきれなくなった。その輝きが、彼女に幸せをもたらしてくれそうな気がしたのである。しかし、事実は逆であった。キジャン・クンチョノは捕まらず、逆に彼女は自身の欲に捕われてしまったのだ。それはラウォノという姿で現れた。手短に言えば、彼女は『 diruda paripaksa 〈語意不明:翼を折られる?籠の鳥といったニュアンスか?〉』となったのだ。そして12年間近くの間金の檻に入れられることになる。
 ラウォノがロモに敗れ、シントは開放された。しかしアルンコ王に汚されていないことを証明しなければならなかった。彼女は炎の中に入るとこで『試された』のである。キ・ダランの語るところによれば、彼女は死ぬこと無く、試験に合格したのであった。彼女の潔白は証明された。シントはラウォノに触れられていなかったのである。
 上記の物語が描くのは次のようなことである。人が注意を怠って欲望を追えば、幸せな者でも災厄に見舞われることになる、と。
ワヤンとその登場人物〜ハルジュノソスロとラマヤナ 第30章 _a0203553_0221661.jpg





1976年5月9日 ブアナ・ミング
by gatotkaca | 2013-04-22 00:27 | 影絵・ワヤン
<< ワヤンとその登場人物〜ハルジュ... ワヤンとその登場人物〜ハルジュ... >>