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木から落ちた猿

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ワヤンとその登場人物〜ハルジュノソスロとラマヤナ 第28章

28. スリ・ロモ、ウィスヌ神の顕現、英知と公正の聖なる人のプロフィール
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 カウサルヤの提言で、ドソロトはさらに二人の妃を迎えた。ケカイ Kekayi とスミトロ Sumitra である。ケカイを妃に迎え入れた時、彼は病に伏した。そしてケカイはドソロトの療養に尽力したのであった。かくてサン・プラブは言う。
 「我が妹ケカイよ、そなたは私の命の恩人だ。私はそなたと約束しよう。望みをひとつ言うがいい。決して拒まず必ずかなえてやろう。」
 ケカイは遠い将来のことに思いをはせた。考えがまとまると彼女は言った。
 「ああ、敬愛する高貴なるスリ・バギンダ〈王〉。今の私には知恵が足りず、思いつきません。そのことは後にして、まずは陛下が健康と体力を取り戻されることが先でございます。」
 ドソロトの妃たちは王宮で幸せに過ごしていた。幾月か経って、カウサルヨはしばしば吐き気に見舞われ、すっぱい果物また完熟した果物を買うようになった。さらに辛い物をほしがり、ルジャ rujak やロティス Lotis 〈香辛料をかけたサラダの一種〉を見ると顔をしかめた。
 一月後、三人の妃の食べ物の好みは同じになっていた。『半分熟した kemrampo 』マンゴー、スターフルーツ、パイナップル、ミカン、ジャムブ、ラムブータンそしてドゥクといった果物で『ブル・ブクティ bbulu bekti〈スラマタン(儀式)用の供物〉』を作るよう命じられても、果物係は驚かなかった。手短かに言えばすべての果物は『熟して』いたのである。
 それからまた9ヶ月が過ぎて、ふくよかで、すべすべの、光り輝く赤ん坊が生まれた。彼は聖なる光を発していた。それは聖なる魂の光であった。
 それゆえ、その子は父親とルシ・ワシスト Wasista によって『ロモ Rama 』と名付けられた。ロモとはウィスヌ神のことである。ウィスヌは真実である。真実とはひとつの現実である。彼は生きるもの存在するものすべての源である。彼はそれ自体が命である。ロモとウィスヌは『ロロロネ・アトゥンガル Lorolorone atunggal 〈ふたつにしてひとつ〉』、理念としてひとつ、感覚においてひとつ、そして命においてひとつなるものである。喩えて言えば、ウィスヌが歌詞 Sastra ならばロモは曲 Gendingである。歌詞〈文字〉は見ることができ、目で読むことができる。そして曲は聞くだけで秘密〈核心〉を知らせることのできるものである。これこそ真実と名付けられるものであり、ウィスヌがロモの真実なのである。
 半月後、ケカイも男の子を産み、バロト Bharata と名付けられた。スミトロはラクスモノ Laksmana を産んだ。半年後ラクスモノはサトルクノ Satrukna という名の弟を得た。
 両親からの教育を得て、ドソロトの息子たちは立派で、ハンサムな青年に成長し、言葉遣いは礼儀正しく、両親の言葉によく従う若者となった。
 物語は進み行き、マンティリ Mantili 国のジャノコ Janaka 王が嫁取り競技サユムボロを開催した。ロモはこれに勝利し、妃としてシント Sinta を獲得した。ロモが父に代わってアヨディヨ国王に推挙された時、とつぜんケカイはドソロトにかつての約束の履行を迫った。彼女の息子をアヨディヨ王にせよと言うのである。それこそがケカイがドソロトに望んだことであった。
 真のパンディトたる者の言葉は翻し得ない。ドソロト王は約束の履行を拒むことができなかった。王の言葉は守られなければならないのだ。ケカイの言葉に従う他なく、ロモにアヨディヨを去り、ダンドコの森で13年間過ごすよう命じたのである。シントとレクスモノはロモと共に出発した。
 またしても、人間は同等の重さの選択を迫られるのだ。名に恥じぬためにロモを追放するか、さもなくばロモを王とし、約束を反古にするか(かくて名は地に落ちる)。しかしバロトはそれを善しとせず、アヨディヨ国の王位を拒否し、ロモを探してアヨディヨの王となるよう願った。ロモは子として、父ドソロト王の命に服しアヨディヨの王に戻ることを拒んだ。バロトは王のしるしとして彼のサンダルを所望した。そしてロモはバロトに指導者としての心得、『ハスト・ブロト Hastabrata 』、つまり最上の八つの教えを授けたのである。
 物語は続く。皆が知っているように、この後シントはラウォノに連れ去られアルンコ国に囚われてしまう。そしてついにシントは取り戻されるのだが、彼女は純血を疑われてその身を焼く。シントにとっては不幸なことであった。
 ロモがアヨディヨの王位に復権してから数ヶ月後、彼らは災厄にあう。シントはまだ妊娠したばかりであったが、国の民にその純血を疑われて森の中に追放されてしまうのである。
 シントの運命のさいごにおいて、彼女は双子のロウォ〈ラヴァ Rawa〉 とクショ〈クシャ Kusya 〉を産んだ後、避けた大地に呑込まれて死ぬのである。
 このように物語は続く。この物語に隠された意味は、シントの物語を追いかけながらお話ししよう。
by gatotkaca | 2013-04-20 03:23 | 影絵・ワヤン
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