ブログトップ

木から落ちた猿

gatotkaca.exblog.jp

インターバル:Hik(ヘッ) のこと

 堅苦しい話が続いて疲れたので、今回は『トリポモ』の訳はちょっとお休み。先日ジャワの歌姫・狩野裕美さんに教えてもらったHik というものについてのお話を紹介する。Hik は「ヘッ」と発音する。ソロの通りにたくさんある屋台(ワルン)の一種?で、ジョクジャではアンクリンガン Angkringan と呼ぶ。狩野さんはカタツムリのサテがお好きだそうである。筆者も食してみたいものだ。
 angkringan 、Hikについて書かれたブログを見つけたので以下で紹介する。ジョクジャの女子大生のブログのようだが、なかなかおもしろかった。
元リンクはこれ→Sejarah Warung Angkringan Atau HIK

 一応日本語訳を下記に載せておく。イネ語がめんどくさい人はこちらで読んでください。なお文中のジャワ語訳は全く自信が無いので間違いに気付いた人は、教えてください。よろしくお願いします。(インドネシア語も自信は無いのですが。)

ワルン・アンクリンガン Warung Angkringanまたはヘッ Hik の歴史

プリスタ・アユ Prista Ayu

 普段の生活の中で、お腹がへってくつろぎたいけれど、あまり予算を使いたくない、そんな時どうしますか?あなたが大学生、あるいは仕事でジョグジャ〈ヨグヤタカルタ〉の街にいるとして、『アンクリンガン angkringan 』と呼ばれる場所にはお詳しいでしょうか?そう、アンクリンガンはジョクジャの、どの通りでもすぐに見つかります。呼び名は違うけれど、ソロやクラテンにもあります。ソロでは『ヘッ Hik 』と呼ばれています。アンクリンガンというのはジャワ語の『angkring』から来ていて、リラックスして座る(ふつうは椅子に片足をかけて)という意味です。

 ジョクジャのアンクリンガンとソロのヘッは本質的にはだいたい同じものです。今夜のジョグジャは晴れています。暗い夜空に浮かぶ半月がスイカのように見えます。まだアンクリン〈リラックス〉するところが見つからない?ああ、ジョクジャの街に不慣れなんですね?

 アンクリンガンは青やオレンジなど独特の目立つ色のプラスチック製防水シートを木製のカートにかぶせた、屋台の一種です。お客さんのキャパシティはだいたい8人くらい、アンクリンガンは夕方から早朝まで開いています。でも昨今は昼過ぎから開いている店もありあます。従来は夜の照明は、街灯と灯油のランプに頼っていました。
 アンクリンガンでの定番メニューはナシ(スゴ)・クチン〈nasi=ご飯、sega=ご飯〈ジャワ語〉、kecing=猫〉です。そう、一見して分かるように、ふつうバナナの葉にくるまれている小さなご飯のかたまりは、まさに猫まんま、えへへへ(笑)。ご飯につくおかずは、ふつうテムペ(納豆を揚げたような食材)かトゥリ(teri 魚の南蛮漬けのようなもの)、あるいは卵焼がちっちゃ〜い2かけといったところです。臓物を使ったサテ(串焼き)やウズラの卵のサテもあります。飲み物はウェダン・ジャヘ(生姜の入った甘い飲み物)、クルプック(チップス)その他も充実しています。ナシ・クチン(ジャワ語ではスゴ・クチン sega kucing )に戻りますが、それはひとつの決まったメニューというわけではなくて、たくさんのアンクリンガンでナシ・ブンクス〈総菜とご飯のセット〉も出されています。
 その量が(すごく)少ないので、まるで猫の餌のようだということから、『ナシ・クチン』と名付けられたのです。男の人なら3〜5個はいけるのではないでしょうか。私(ブログ筆者)は女だけど4個ぺっろと食べたことがあります。へへへへ。このご飯はご存知のようにおいしいので、私は病み付きになって、困ってます。飲み物はいろんな種類があって、紅茶、アイス・オレンジ、コーヒー、ミルクなど、その他お好きな物を混ぜて出してもくれます。みんなすごく手頃なお値段です。でも今時は燃料価格の急騰がアンクリンガンのお皿にもふりかかって来ているように感じられます。それでもアンクリンガンのファンはまだたくさんいます。
 多分100メートルごとにアンクリンガンを見つけることができるでしょう。ジョクジャで雨後のタケノコのようにはやっているのはどういうことなんでしょうか?学生にとってはアンクリンガンでくつろぐのはとても楽しいし、私もよくアンクリンガンでお店の人とお喋りしています。
 毎回私は『Pak njenengan asline king pundi? 〈旦那さんは、どういった王様の後裔なんですか?〉』と尋ねます。答えはだいたい同じ。『Kula king Klaten, Mbak 〈私はクラテン王です、お嬢さん〉』。ヘルマン・ヨハネス通りのアンクリンガンの商人から、ジャス jasu (生姜ミルク)を買った時に聞いてみたところ、『 Wis suwe po Mas bukak angkringan? 〈お兄さんはアンクリンガンのお店を開いて長いのですか?〉』。彼は答えます。『 Lha wong mbahku wae bukak angkringan kok, Mbak. 〈そう、権利を持ってる者だけがアンクリンガンを開けるんですよ、お嬢さん〉』。実際アンクリンガンはいつ頃からジョクジャにあるんでしょう?
ーーーーーーーーーーーーーー
 ジョクジャのアンクリンガンの歴史は、貧困を克服する戦いの物語とも言える。ジョクジャのアンクリンガンは1950年代、クラテンのチャワス Cawas 出身のバ・パリオ Mbah Pario という名の商人によって始められた。チャワスは中部ジャワ、クラテン地域の行政区で、乾期には特に不毛の地域である。耕地が不足して生計を立てることが困難であるため、バ・パリオは街に出ることにした。そう、ここジョクジャカルタである。
ーーーーーーーーーーーーーー
 バ・パリオはジョクジャカルタのアンクリンガンのパイオニアと呼べるでしょう。バ・パリオのアンクリンガンはその後、1969年ごろ、バ・パリオの息子、リ・マンLik Man に受け継がれました。数回場所を変えましたが、現在リ・マンはトゥグ駅の北側に拠点を持っています。時が経ち、次第にこのビジネスは徐々に広まり、今やジョクジャの街の隅々にアンクリンガンが見つかります。リ・マンのアンクリンガンも今やジョクジャで一番有名な店となり、ジョクジャの外でもその名は知られています。
 カートに覆いを掛けたアンクリンガンとは別に、最近はアイッキャッチャーとしてポールを立てているアンクリンガンも現れ始めています。トゥグ駅にはバ・パリオ印の商品を扱う店舗もあります。時には、バ・パリオの商売、アンクリンはティン-ティン・ヘッ ting-ting hik (hikの発音はヘッ)とも呼ばれます。これはお店の人が売りあるく際に、『へー……イイェー hiiik........iyeek 』と呼び込みの声をかけるからです。この言葉 ヘッ hik はよくヒダンガン・イスティメワ・カムプン Hidangan Istimewa Kampung 〈田舎の特別料理〉の意味に解釈されることが多いようです。「ヘッ」の呼び名はソロ〈スラカルタ〉ではよく聞かれますが、ジョクジャではアンクリンガンの方がポピュラーです。アンクリンガンの歴史はジョクジャから始まったと言えるでしょう。
 アンクリンガンは学生やトゥカン・ベチャ(人力車の運転手)、肉体労働者といった下層労働者たちの集まる周縁環境の典型と言えるかもしれません。けれど今日ではもはや周縁環境とは言えず、貧困層だけでなく、高級レストランで食事ができるような豊かな人にもアンクリンガン愛好家が生まれています。
 私が今まで試したアンクリンガンの中では、ジョクジャの伝説的アンクリンガン、リ・マンのジャダ・バカル jadah bakar 〈すりおろしたココナツを固めて焼いた料理〉とリ・マン特製調合のテ・ナスギテル teh nasgitel 〈お茶の一種〉(熱くて甘くて濃い)に夢中です。いろいろな職業の有名人がアンクリン・リ・マンのワルン(お店)にやって来ることも珍しくありません。たとえば、バンド、シンテン・ルメン Sinten Remenのリダー、ブトゥッ・カルタラジャサ Butet Kartaradjasa のお兄さん、ジャドゥッ・フェリヤント Djadug Feriyanto もトゥグ駅のリ・マンのアンクリンガンの愛好者です。ジャドゥッだけでなく、チャ・ヌン Cak Nun (エムハ・アイヌン・ナジブ Emha Ainun Njib )、ブテ・カルタラジャサ、マルウォト・カウェル Marwoto Kawer といった有名な作家、文化人、スポーツ選手からチリ出身のPIMS〈Persatuan Sepakbola Indonesia Mataram:ジョクジャをホームとするサッカークラブ〉の選手、ジャミー・サンドヴァル Jammie Sandoval までもがアンクリンガンでおやつを食べるのです。
 友人と共に疲れを癒し、またそこで新しい人との出会いもあり、くだらない話をし、冗談を言い合い、後輩をいじめてみたりして、心の重荷を降ろして笑えるようになるまで。アンクリンガンの中ではみんな同じで、上下なんか無いのだから。
いろいろなルーツをもっていても。
[PR]
by gatotkaca | 2012-10-26 00:31 | 影絵・ワヤン | Comments(2)
Commented by 冨岡三智 at 2012-11-08 01:44 x
ヘッがhikと綴るというのは初めて知りました。私はソロの人からjaheを出すワルンがヘッhe(jahe→heだから)なのだと聞いていました。
ジョグジャには、というか、ソロ以外にはジャへを出すワルンがないような気がします。私にとってはアンクリンガン=ワルンで、ヘッとはどこか感覚的に違う気がします。
Commented by gatotkaca at 2012-11-08 08:09
冨岡さん、コメントありがとうございます!たしかに、ヘッのほうが妖しい雰囲気ですよね。アンクリンガンも私がジョクジャにしばらくいた頃(1980年代)はけっこう妖しかったのですが、最近はふつうのワルンと見分けがつかない明るい雰囲気になってますね。そういう意味ではヘッの方が古式ゆかしい?のかもしれません。
<< 「トリポモ、サトリヨ精神の神髄... 「トリポモ、サトリヨ精神の神髄... >>