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木から落ちた猿

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ナルトサブドの生涯 その1

 キ・ナルトサブドはワヤン界の大御所ダランで、1950年代半ばから1985年にその生涯を閉じるまで、超一流のダランとして活躍し、その影響力は今日でも多大なものがある。日本ワヤン協会でご紹介するワヤンの演目も大半はこの方の演じたものである。
 スマント Sumanto 著「ナルトサブド ワヤン界における存在 その伝記 Narto Sabdo kehadirannya dalam dunia Pedalangan sebuah Biografi 」という本はナルトサブドの生涯と、ワヤン界への影響を記した本で、少々読みにくい部分もあるが、貴重な資料であると言える。以後、この本を拙訳でご紹介したい。といっても、筆者の手に入れた本は残念ながら落丁本で、4頁ほど欠損があるので、その部分に関してはご海容を乞う。

「ナルトサブド ワヤン界における存在 その伝記」

序文


 我が感謝の祈りをトゥハン・ヤン・マハ・エサに捧げます。その恩恵により、ここに「ナルトサブド ダラン界におけるその存在、ある伝記」と題する著作を上梓することができました。本書は、クロンチョン keroncong 、クトプラ ketpurak 、ワヤン・ウォン wayang wong 、カラウィタン karawitan 、そしてダラン pedalangan といった諸藝術分野に、著名なる芸術家として名を成したキ・ナルトザブドの生涯を記したものである。キ・ナルトサブドはさまざまな藝術分野に才能を発揮したが、本書ではダランの分野に焦点を当てて考察する。キ・ナルトサブドのダランとしての業績は、ダラン藝術の歴史的発展における試金石となり、同時に当時ひじょうに強かった地域スタイルの境界を取り払う先駆者でもあった。

 キ・ナルトサブドへの評価は、彼の存命中に止まらない。カラウィタンとダランに対する彼の業績は、この2002年にいたるまで、彼は多くの芸術家たちに畏敬されている。そのカラウィタン作品とワヤン上演の録音もまたスラカルタ周辺のラジオ放送などでしばしばたくさんのリクエストを受けている。たとえば、ここ三年ほど続いて、バンガ・ボヨラリBangak Boyolali のラジオ・プルマタ Radio Pertama では、毎週月曜はつねにキ・ナルトサブドのワヤンを放送している。毎回00:00から01:00までリスナーとの対話があるのだが、ナルトサブドへのレビューがもっぱら人気を博している。藝術を愛する人々から支持されるのは、もちろん彼の業績が高いクオリティーに達しているからである。またスラカルタとその周辺のナルトサブド崇拝者たちは、「サブド・パンディト Sabda Pandhita 」という会を作って、故人への感謝と賞賛を表している。

 筆者は本書が、イブラヒム・アルフィアン博士 Prof. Dr. T. Ibrahim Alfian 、R・M・スダルソノ博士 Prof.Dr. R.M.Soedarsono 、スダルソノ教授 Prf. Soedarsono Sp 、そしてスリ・ハスタント博士 Dr. Sri Hastanto ら偉大な師たちの援助と指針のおかげで完成したと了解している。諸先生にお礼を申し上げると共に、心からの感謝の意を表する。また故人の伝記執筆を快諾下さったキ・ナルトサブドのご家族の方々にも、心よりお礼申し上げる。貴重な情報を下さった方々に大いなる感謝の意を表する。特に、本書の出版にご尽力くださった、STSI(インドネシア藝術大学)スラカルタに感謝申し上げる。

 本書の完成には、故人の母上、イブ・ゴンドディハルジョ Gondodiharjo 、故人の愛妻、スリ・プルワティ Sri Purwati 、最愛のご子息方から多大なる精神・物質面でのご支援を賜った。その全ての献身に対し、お礼を申し述べると共に最大限の感謝の意を表したい。特に故人の母上に敬意を表し、来世での平穏をお祈りする。

 最後に、筆者は本書が、ワヤン上演藝術のレパートリーの中に、大海の一滴ほどの価値を持ってくれることを願う。本書が完全とは言えないことは分かっている。読者からの意見によりさらなる修正を得られんことを願う。三拝九拝。

2002年7月スラカルタ

スマント Sumanto
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by gatotkaca | 2012-03-01 23:23 | 影絵・ワヤン | Comments(1)
Commented by yuriyuruyuru at 2012-03-25 22:43
はじめまして。大阪でガムランを演奏しています西田有里といいます。ワヤン、ナルトサプトが大好きです。いつかナルトサプトのことは詳しく調べたいなと思っているのですが、たまたまこの記事を見つけました。すごい!嬉しい!ゆっくり読ませて頂きます。ありがとうございます!!
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