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木から落ちた猿

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カルタヴィーリャ・アルジュナ その1

 ジャワのワヤンでのアルジュノソスロバウは、インド起源の人物ではあるが、ジャワとインドの説話では、相当な差異が生じている。まずは、元ネタとも言えるインド版アルジュノソスロバウの物語として、ヴァールミーキの「ラーマーヤナ」第七編『ウッタラ・カンダ』の36節から38節において語られる、アルジュナ・カルタヴィーリャの物語を紹介する。
 The RAMAYANA "UTTARAKANDAM ” edited & published by Manmatha Nath Dutt, Calcutta, 1894 をテキストとして英語からの重訳になるが、拙訳で紹介する。

ウッタラ・カンダ

36節

 かくして、アガスティヤ仙に拝跪し、ラーマは驚きながら再び言った。「おお、ブラフマン。輪廻に生きる者の中で最高の者よ、ラーヴァナが地上を旅する間、人々はいなかったのですか?王は?王子は?彼の罪をいさめる者は?すべての王はその力と能力を剥ぎ取られてしまったのでしょうか?様々な優れた武器をもってしても彼を除くことはできず、多くの王が敗れたとのことですが。」ラーグハヴァの言葉を聞き、六種の徳をそなえた苦行者アガスティヤは笑いながら、ブラフマーがルドラに話すがごとく言った。「おお、ラーマ。おお、地上の主よ。地上を巡るラーヴァナは、天界に見紛うほどの街、マヒシュマティの街に到着した。そこは火の神が永久におわすところ。そこに君臨する王の名はアルジュノ。サラに守られた永遠の火のごとく燦然と輝く王である。ある日、高貴にして強力なるハイハヤの王、アルジュノは妃を遊ばせるためにネルブダ河に遊行した。その日、ラークシャサの主、ラーヴァナはそこに到着し、側近たちに尋ねて言った。「アルジュナ王はどこだ?汝らは疾く告げよ、我はラーヴァナなり。汝らの王と戦いにやって来た。汝らはまず、我が到着を彼の者に告げよ」かようなるラーヴァナの口上を受け、学識ある大臣たちはラークシャサの主の情報を知らしめ、王の不在に対処した。市民たちから王の不在を耳にしたヴィシュラバスの息子は街から引き上げ、ヒマラヤに似たヴィンディヤ山に至った。彼は雲のごとく蒼穹にまたがり、大地の活力のごとく盛り上がり、空を遮る山を見つけた。山は千の頂きをもち、洞窟には獅子が住み、何百という泉が湧き出ていた。山は、笑いに満ち、天界のガンダルバ、アプサラ、キンナラたちが女たちと戯れて、天界の一部のようであった。水晶のように透明な水をたたえる河が流れ、千の蛇が舌を震わせるようであった。彼のヴィンディヤ山はヒマラヤのごとき外観を呈し、巨大な洞窟を持っていた。ラークシャサの王、ラーヴァナはネルブダ河に至った。聖なる水は西方の大洋へ注がれていた。その水は水牛、鹿、虎、獅子、熊たちに掻き回され、熱気が象たちを困らせた。その水に覆われて、チャクラバカ、カーランダヴァ、白鳥、水鳥そしてサーラサスは猛り狂い、音を放っていた。麗しい乙女のごとき魅惑的なネルブダ河は、樹々を茂らせその飾りとし、チャクラバカはその息吹、広がる森はその腰、メクハラから白鳥が列をなし、花の繊維が添付され、泡立つ水は絹の布地、水に飛び込む喜びはそれに触れる歓喜となり、芽吹く蓮の花は白い目となる。車から降りてネルブダ河の水に浸かれば、最高の流れ、美しいものであった。ラークシャサの主、ラーヴァナと側近たちは、多くの苦行者たちの住まう、その岸辺に落ち着いた。美しく輝くネルブダ河の高貴さはガンジス河のようだと語り、彼は、大臣のスカとサラナに身振りを交えて口上した。「観よ、光にみちて描き出される蒼き地上のさまを。太陽は中天で熱を放つ。しかしここに座す我を見よ、太陽の光は月のよう冷ややかだ。我を恐れて、風も優しげに吹き、ネルブダ河の水の感触も冷たく香り高く、我らをねぎらっておる。この魅惑的なネルブダ河よ、鰐、魚、そして鳥にあふれている。ゆるやかな流れはおびえた乙女のよう、静かに佇んでいる。多くの王との諍いで傷を負い、そなたらは血にまみれておる。されば、サルヴァバウマのよう、怒れる象がガンジス河の水に入るように、さあ、汝らもネルブダ河の水に入って、吉祥と健康を授かるがよい。この流れに身を浸せば、そなたらの罪も洗い清められよう。わしもまた秋の月の光のような河の岸辺で、その腕にピナーカを抱く、マハーデーヴァの花々に敬意を込めて礼拝しよう。」ラーヴァナの言葉を聞き、プラハスタ、スカ、サラナ、マホダラ、ドゥルマクシャそのほかの側近たちはネルブダ河の水に入った。河はヴァマナ、アンジャナ、パドマたち象を受け入れるガンジス河のように、象のようなラークシャサたちにかき乱された。かくて高貴にして強力なラークシャサたちは水から上がると、花を摘み、ラーヴァナに捧げた。間もなくラークシャスたちは絵のようなネルブダ河の岸辺に花を積み上げ、それは白い雲のようであった。集められた花々はラークシャサの王、ラーヴァナが巨大な象がガンジス河に入るよう、沐浴するとネルブダ河に散布された。沐浴が済み、特別な祈りが唱えられた。そして濡れた布が白い布の上に置かれた。祈りの場所を見出し、彼は腕を畳むと、岸辺を進んで行った。ラークシャサたちもまた、山々が動くように彼の後に付き従った。ラーヴァナはどこへ行くにも黄金のシヴァ・リンガを持っていた。かくてラーヴァナは、砂を積み上げ、様々な蜜の香りたかい花々を捧げ、サンダルをはいて祈りを捧げた。シヴァへの祈りを終えると、王冠に月をあしらう、ダイティヤ最高の者は、恩恵を授かり、災難を除くため、腕を振り上げて夜歩く者の踊りを踊り、その前に唄を歌った。
(つづく)
by gatotkaca | 2011-10-22 23:58 | 影絵・ワヤン
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