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木から落ちた猿

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演目「ムルウォコロ」のパクム その2

4.
 キ・ブユット・ワンケンは、夫の言うことをきかない娘と会っていた。夫の名はジョコ・ソンドン(トゴの人形を使う)、メダングロウォンの者であった。ブユット・ワンケンの娘は、名をロロ・プリムプン(やや顔を下げた形の、身体の太った女性の人形を使用する)という。彼女はジョコ・ソンドンと結婚したばかりだが、夫に仕えようとは思っていなかった。キ・ブユット・ワンケンはそれとなく、ロロ・プリムプンが夫に仕えるよう諭した。ロロ・プリムプンは同意したが、ワヤン・クリが見たいとねだった。キ・ブユット・ワンケンはそれを許した。ジョコ・ソンドンは命じられて、メダンカウィットのニャイ・ランダ・スマムピル(きれいな村の中年女の人形を使う)の家の小屋にいるダラン・カンドブウォノに会うことになった。ジョコ・ソンドン、またの名をブユット・グドゥワルはメダンカウィット村へ行った。

5. 
ダラン・カンドブウォノは、ニャイ・スルニ、キヤイ・カルンルンガンそして、ニャイ・ランダ・スマムピル(ニャイ・ランダ・アスムソレ)に対面していた。話し込んでいた彼らの中に、ジョコ・ソンドンがやって来て、自宅でワヤンを上演してほしいという、キヤイ・ブユット・ワンケンの願いをキヤイ・ダラン・カンドブウォノに申し述べた。
 キヤイ・ダランは承知した。キヤイ・カルンルンガンとニャイ・スルニはワヤン上演の支度を整えた。ジョコ・ソンドンはメダンタムトゥに戻った。キヤイ・ダラン・カンドブウォノ(バトロ・ウィスヌもしくはアルジュノの人形を使う)、キヤイ・カルンルンガン(スマルの人形を使う)、ニャイ・スルニ(デウィ・サラスワティのようなビダダリ=天界の妖精の人形を使う)はジョコ・ソンドンと共に出発した。

6.
 キヤイ・ダラン・カンドブウォノはワヤンを上演した。キタイ・カルンルンガンとニャイ・スルニはガムランを演奏した。ワヤン上演の途中、ジョコ・ジャトゥスマティが上演の中にやって来て、ガムラン奏者の間に隠れた。追いかけて来たバトロ・コロは庭で立ち止ま里,ワヤン会場へ入る勇気はなかった。ワヤン見物の人たちは怖がって、一人また一人と上演の場から遠ざかって行った。キヤイ・・ダラン・カンドブウォノはワヤンを中断した。
 バトロ・コロはキヤイ・ダラン・カンドブウォノにワヤンを続けるよう頼んだ。キヤイ・ダラン・カンドブウォノはバトロ・コロが持っている鉈(バドモ)を謝礼として渡すならば、ワヤンを続けよう、と言った。バトロ・コロは、上演が終わったら返すという約束で、鉈を渡した。バトロ・コロは上演会場の外に座った。
 キ・ダラン・カンドブウォノは上演を再開した。バトロ・コロは、生まれたての赤ん坊の匂いを嗅ぎ付け、探した。赤ん坊は取り上げられ、食われようとした。しかし、バトロ・グルの付けた条件によれば、スクルタの子を食いたければ、バトロ・コロが授かった鉈で殺してからでなければならない。バトロ・コロは命令に違反することは出来なかった。しかも鉈はキ・ダランの手の中にある。彼はキ・ダランがワヤンを終えて、はじめて鉈は戻ってくるのである。
 その間にジョコ・ジャトゥスマティは上演会場の外へ出た。彼は逃げたが、バトロ・コロに取り上げられ、がっちり捕まってしまった。バトロ・コロは赤ん坊を腰にはさみ、ジョコ・ジャトゥスマティを手につかんでいた。ふたりはキ・ダランのもとへ運ばれた。
 キヤイ・ダラン・カンドブウォノはワヤンを中断し、バトロ・コロは再開を望んだ。キ・ダラン・カンドブウォノは、鉈とつかんだ子どもと腰にぶら下げた赤ん坊を交換しようと申し出た。バトロ・コロは仕方なく、鉈と子ども,赤ん坊を交換した。彼らは話し合いを続けた。話の中心は、どちらがより立場(年令)が上かということだった。キヤイ・ダラン・カンドブウォノはバトロ・コロの物語についてのキドゥンを読み上げた。彼がバトロ・コロの物語のキドゥンを読み終えると、バトロ・コロは敗北を認めた。
 キヤイ・ダラン・カンドブウォノはまた、バトロ・コロの額、口蓋(上顎)、そして胸に書かれた文書を読み上げた。文書が読み上げられると、バトロ・コロはヒワン・ギリノトの命令を想起し、キヤイ・ダラン・カンドブウォノに降伏した。彼は年下(地位が下)であることを認め、キヤイ・カンドブウォノの子となった。キヤイ・ダラン・カンドブウォノはバトロ・コロにクルンドワホノに住まい、キ・ダランの子としてスクルタの子ども/人を苦しめることのないように、と頼まれた。
 バトロ・コロはクルンドワホノの森に住むことを承知し、サンティ・プジャ、また清めのマントラを祈ってくれるようにと願った。清めのマントラが唱えられた後、バトロ・コロは聖水(花を浮かべた水)でマンディできるよう頼んだ。

 “このとき、スクルタの子ども/人は聖水(花を浮かべた水)を散布され、キ・ダランによってその髪が切られる”

 マンディが済むと、バトロ・コロは気持ちを改め、キドゥンを読み上げてくれるよう頼む。キヤイ・ダラン・カンドブウォノはキドゥン・プジャアン・コロを読み上げる。バトロ・コロは喜び、キヤイ・ダラン・カンドブウォノに認められた子孫たちの安寧を見守ることを約束した。キヤイ・ダラン・カンドブウォノはバトロ・コロの誓いに感謝した。バトロ・コロは暇を乞い、クルンドワホノへの道中の食料としてサジェン(供物)を願った。バトロ・コロは所望のサジェンを選び、キ・ダランが承認した。バトロ・コロはキヤイ・ダランの前に戻り、クルンドワホノへ出発した。

7.
 バトロ・コロが去った後の場面は
 (1)バタリ・ドゥルゴがキヤイ・ダラン・カンドブウォノのもとに現れ、お金やその他の女性の身にふさわしいサジェンを乞う。キ・ダランは承認する。
 (2)バトロ・プニャリアンはヤシの葉(ロンタル)と筆記用のナイフを乞い、見聞したことを記すことを願う。キ・ダランは許可した。
 (3)レバック・キユック(プラゴトの人形を使用する)がやって来て、雄鶏、雌鶏、トゥムペン(米を円錐上にかたどったもの)、ジュアダ(菓子)、クトゥパット(四角い握り飯)、レパット(ちまき)、さまざまな種類の菓子のサジェンを乞う。キ・ダラン・カンドブウォノは応え、全ては同意され持って行かれる。
 (4)クブラ・ドゥカカン(ドゥルソソノと似たワヤンを使用する)が来て、サジェンの米と副菜(ラウク・パウク)、各種の粥,その他を乞う。キ・ダランは承認する。
 (5)コロ・バンジャル(ラクササの人形を使う)が来て、庭のサジェン、花、香料を乞う。キ・ダランは許可する。
 (6)コロ・エンジェル(背の高いやせたラクササの人形を使う)が、四つ辻、道,井戸、池にあるサジェンを乞う。キ・ダランは許す。
 (7)コロ・ジャト(オントセノか類似の人形を使う)が来て、部屋の仕切りのあるサジェンを乞い、寝室の清掃をよく確かめるよう注意する。キ・ダランは約する。
 (8)コロ・イジェン(バトロ・サムブあるいは類似の人形を使う)が、キヤイ・ダランの子と子孫は毎年記念日にサジェンを捧げるよう願い、キ・ダランは了承する。
 (9)ヒワン・ブムブルックが、水牛,馬、ヤギ、農機具、鎌、鉈、剣、その他を乞い、キ・ダランは応ずる。
 (10)ニャイ・ワドン(老女の人形を使う)が、キャイ・ダラン・カンダブウォノの子や子孫が泣いたり、病気になったりした時のための、おんぶひもの材料としてカインのサジェンを求める。キヤイ・ダラン・カンドブウォノは許可する。

8.
 四人の盗賊、クティロ、ランキル、プントゥン・ルユン、ジュギル・アワル・アワルがキヤイ・ダラン・カンダブウォノの前に伺候し、許しを乞う。キヤイ・ダランは彼らに、悪事から足を洗うよう命じる。

9.
ジョコ・ジャトゥスマティは別れを告げ、メダンガティの母のもとへ帰る。キヤイ・ダランはジョコ・ジャトゥスマティにマンディすることを許し、ジョコ・ムルヨの名を与える。

10.
 ワヤンを見ていたキヤイ・ブユット・ワンケンは、キヤイ・ダラン・カンドブウォノの前に出てワヤン上演の終了を求める。キヤイ・ダラン・カンドブウォノは、スクルタの子どものマンディが終わったら、上演は終了であると答える。

11.
 キ・サプジャガッド(バトロ・バユの人形を使う)がキ・ダラン・カンドブウォノの前に伺候する。彼は、家とワヤン会場の庭、スクルタの子の住む部屋があらゆる邪悪な障害から解放されるよう、清める役目を与えられる。キ・サプジャガッドはイヤイ・ダラン・カンドブウォノの命を遂行する。彼はガンダルウォ、ジン、妖精・精霊、幽霊、その他を相手に戦い、すべては打ち負かされる。

タユガン(キ・サプジャガッドによる勝利の踊り)

12.
 サン・ヒワン・ウェナンが到来し、キヤイ・ダラン・カンドブウォノに、一行のすべての者はジュングリンサロコへ戻るよう告げる。キヤイ・ダラン・カンドブゥオノ、キヤイ・カルンルンガン、ニャイ・スルニ、そしてバトロ・プニャリアンはメダンタムトゥ村をあとにした。

13.
 バトロ・ナロド、バトロ・ウィスヌ、バトロ・ブロモ、バトロ・プニャリアンは、ジュングリンサロコでヒワン・ギリノトとデウィ・ウモに伺候した。かくて彼らにまかされ、請け負われた仕事は成功したのである。バトロ・プニャリアンは記した全てを読み上げ、特にバトロ・コロの脅威から解放されたスクルタの子の名前を読み上げる。ヒワン・ギリノトの心づくしを賜り、神々は宴に招かれるのである。

タンチュプ・カヨン(終劇)
by gatotkaca | 2011-09-10 09:21 | 影絵・ワヤン
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