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木から落ちた猿

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ワヤンとは?その2 〈ダラン-1〉

 先述のように、ワヤンにおけるダランは、上演に際して全てを統括する存在である。特記すべきは、ワヤンにおいては語りの詞章は固定されておらず、ダランがその場その場で即興的に紡ぎ出していく、ということである。
 誤解のないように記しておくが、この場合の即興的というのは、インプロヴィゼーション(自由即興)とうことではない。ワヤンには物語があり、ある程度のプロットが存在する。また、一晩のワヤン上演には、ガムランの旋法に基づいた名で呼ばれる決まった場面展開の規定がある。ワヤン・クリ上演においては次の三つの場面が知られる。
 1.パテット・ヌムPathet nem(=6)、2.パテット・ソゴPathet sanga(=9)、3.パテット・マニュロ Pathet manyuraである。

1.ワヤン開始から夜中まで
   ジェジェラン(王の謁見所の場面)~カプトレン(王妃の館の場面)~プラン・ガガル(軍隊の参集・出陣・敵との軽い戦い)
2.夜中0時から3時頃まで
  ゴロゴロ(道化=プノカワンの場面)~プラン・クムバン(花の武将の戦い=プラン・チャキル)
3.それ以降(物語の本筋ともいえる部分)

 場面によって語られるべき内容や、定型句が多種存在し、(特にジェジェランにおいては、言い回しは違っても、どのダランもほぼ同じような内容で語りを進めていく)ダランはこれらの制約にそって自らの創意や地域的解釈をまじえてその語りを構成する。ダランの語りの即興性とは、いわばクリシェを多用したアドリブといった趣きのものなのである。
by gatotkaca | 2011-06-04 01:29 | 影絵・ワヤン
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